■8位:BiSH「オーケストラ」
「BiS的なるもの」から可能な限り遠ざかっている。言い換えると、BiSっぽさがほとんどない。作詞が松隈ケンタとJxSxK(渡辺淳之介)、作曲が松隈ケンタという組み合わせなのに。
メロディーやサウンドの強度の高さはもちろんのこと、歌詞における「特定の時代性に縛られない単語」のチョイスも光る。奇を衒ったところがまったくないからこそ生まれた楽曲だ。
MVに主演しているのは、モデルの涼海花音とタレントの莉音。アイドルと関係ないこの人選もまた意外だった。
■9位:おやすみホログラム「ニューロマンサー」
「ニューロマンサー」とは、ウィリアム・ギブスンの小説のタイトルだ。というわけで、MVが公開されたときにウィリアム・ギブスンのTwitterアカウントにMVを送ってみたところ、即座にRTされて驚いた。本家の目にかなった、とも言えるかもしれない。
荒れ狂うフロアに言及されがちなおやすみホログラムの現場に、プログラミングの感触も冷ややかな「ニューロマンサー」が投下されたときは新鮮だった。バンド・サウンドとは異質ながら、それでもフロアを踊らせる熱さを秘めていた。
プロデューサーのオガワコウイチがラップトップだけを手元に置いてステージ後方に立つスタイルも定着していく。2016年にリリースされた2枚のアルバム「2」「…」は、プログラミングの比率が上がっていく過程でもあった。
そして、おやすみホログラムはほとんどCDを積ませない。そうした従来の古臭い価値観にもとづく「売れる」「売れない」という基準を無視しつつ、恵比寿LIQUIDROOMでのワンマンライヴを成功させた。バンド的な方向性で、アイドルのひとつのビジネスモデルを確立させたのが2016年のおやすみホログラムだったのかもしれない。
■10位:吉田凜音「りんねラップ」
流行りに乗って現れまくった、にわかフリースタイルかぶれはもう出尽くしたのだろうか?
対して、E TICKET PRODUCTIONがプロデュースした吉田凜音の「りんねラップ」は、オールドスクールなヒップホップの楽しさを、フックの効いたライムとともに満喫させるものだった。
吉田凜音にラップが合うとは想像すらできなかったが、もともと肝の座った吉田凜音のラッパーぶりはサマになる。
「りんねラップ」は、そもそもはDVDマガジン「IDOL NEWSING」の企画から生まれたものだった。しかし、2017年1月リリースのE TICKET PRODUCTIONのアルバム「E TICKET RAP SHOW」にも吉田凜音は参加。さらに2017年春には、吉田凜音のラッププロジェクト「RINNE HIP」のミニ・アルバムもリリースされる予定だ。