■ケーキ・お菓子類
お土産で一番多いのは、何と言ってもケーキです。しかし、意外にもケーキはそんなに喜ばれるお土産ではありません。
手ぶらで行くのもなんだし、駅前にケーキ屋があったからちょうどいいや、ここで甘いものでも買って行こう…と、昨日のお客様も一昨日のお客様も思っています。よって、駅にほど近い風俗店では大抵毎日誰かが駅前のケーキ屋さんの箱を持っていることになり、女の子はそのケーキについて常に食傷気味です。仕事から持ち帰った白い箱を女の子同士で押し付けあっていたり、待機室の冷蔵庫に忘れ去られていたりするのを何度も見ました。
また、同僚の女の子を見ていると、どのお店でも一定数、“生クリームが嫌い・チーズが食べられない・卵や果物でアレルギーがある”といった理由でそもそもケーキを食べない子もいました。お客様は「女は甘いものが好きだ」と信じているし、せっかく買って来てくれたものを無碍にもできないし、「後でいただきますね」と冷蔵庫にしまおうとしたら「一緒に食べよう」と言われて逃げきれず無理矢理飲み込んだ、なんて話も。
せっかくお菓子を持って来てくださるのなら、注文つけちゃうと、普段は足が伸びないようなちょっと離れたデパ地下の小洒落たケーキだととてもうれしくって、初めてお会いするならチョコやマカロンなど少し日持ちのするものだと、誰でもありがたくいただけるかなと思います。
ちなみに、私のお土産ケーキで困ったお客様は、体に塗りつけて女体盛りごっこをしたいという方でした。突起という突起に塗りたくられる潰れたスポンジと生クリームを、お客様がベロベロと…。うーん、食べ物で遊んじゃダメ!
■手作り品
手作り品は困ります。リアクションにも取り扱いにも困るのです。食べ物のお持ち込みも含めて、風俗の女の子がお客様からのお土産で機嫌がよくなるとは限らない理由のひとつが、「何かが仕込んであるかもしれない」という“まさか”への警戒なのです。
普段から、いただいた食べ物にはお時間内にその場で手をつけるようにしている私。ある日、お相手したお客様が、白い小さな紙箱からガラスの瓶に入ったパンナコッタを取り出しました。勧められるがまま、箱に入っていたプラスチックの使い捨てスプーンの封を開け、「おいしいねー♪」などと言いながらいただくと、私が食べ終わるのをにこやかに眺めていたお客様が、やおら携帯を手に取りこちらに向けました。そこには、調理中の台所の写真が何枚も…。
食べきったタイミングで見せてきた?と不審に思った刹那私の脳裏に、「えーっ、まおみちゃんお客さんにもらったケーキ食べてるの!? やめなよ、ザー◯ンとかヨダレとか入ってたらヤバいよ!」と騒ぐ同僚の声が…。まあ、今でも普通に食べてますが。
それ以外だと、お土産というよりプレゼントになりますが、私のホームページ写真とお客様のお写真が入った手作りフォトフレームや、お客様作詞作曲の歌、手書きの絵葉書、 手縫いのマスコットなどいただいたことがあります。持ち帰ると、その都度ほかの女の子たちが、仕込みカメラや異物混入がないかジロジロと視線を送ってくるのでした。女の子って、頂き物をそういう目で見てるんですね。