そのうち、ハート団の悪行は世に知られることとなり、彼女は警察から「常に同女の挙動を監視」されることとなる。これを察知したきみ子は、警察の目を逃れて逃亡していたが、本郷の洋食店にいるところを捜査員に発見されてしまったというわけである。
記事には彼女の元同僚のコメントが載っている。いわく、
「そりゃ凄い程の美人で、取りすまして仕事をしている時なぞは何だかまばゆくて傍へも寄りつけない位でした。ああいうのを妖婦型というのでしょう」
その「凄い程の美人」だったというきみ子の写真が記事に添えられているが、写真の写りが悪いのか、その美貌が伝わってこないのが残念である。
こうした、美貌で男をたぶらかし、悪行を重ねるような、妖婦とか毒婦とかいうような事例は、むしろ昔の新聞によく見られるように感じられる。
(文=橋本玉泉)