下着ドロボウといえば、わいせつ事犯の定番のひとつであるが、戦前からすでにその手の犯行は行われていた。
まず昭和2年4月、神奈川県川崎市で40歳の男が逮捕される。当時はまだショーツやブラジャーは普及していない時代で、女性の下着といえば“長じゅぱん”と腰巻だった。この男は、逮捕されるまでに長じゅぱんと腰巻あわせて60枚以上を盗んでおり、逮捕された時にも女性ものの長じゅぱんと腰巻を着用していたという。
盗んだ女性物の下着を自ら着けてみるのも、下着ドロの特徴のひとつである。ちなみに「じゅぱん」とはポルトガル語の「ジバン」から来ている。
その翌年、昭和3年5月には、東京で13歳の少年が警察に補導される。丁稚として働いていた少年は、店の使いとして出向いた出先で物色しては、腰巻を見つけると持ち帰っていた。そうやって盗んだ腰巻は、50枚以上にも及んでいた。
この犯行では、少年は「赤い腰巻」だけを盗んでいた。この手の犯行で、色や外見にこだわるケースは少なくない。そもそも、下着とはいえ、実際には「ただの布製品」にすぎないわけである。この種の実行犯たちは、ターゲットである下着に、性的なイマジネーションを働かせて犯行を繰り返していたのである。
ところでこの13歳の少年、未成年者という点を考慮してのことからか、警察で叱責されただけで放免となった。