なので、「イッていいよ」という声かけは、こちらからすると本来非常にありがたい「振り」をいただいているのです。お客様からはっきりとご要望をいただいているので、その通り殊更大袈裟に痴態を披露すれば、大体の場合は納得してフィニッシュに向かっていただけ一件落着と相成ります。困ってしまうのは、
“盛り上がりどころか、まだ3分も経ってないのに「イキ」要望を出すお客様”です。
こんなお客様がいました。その方には、その方なりのこだわりのプレイがあるらしく、ベッドは使わずに私を壁際に立たせ、手首を縛って天井から吊るしているように見立ててバンザイをさせ、ご本人はパンツもシャツも着たままで私の前にしゃがみ込み恥丘から花びらあたりを触るか触らないかくらいのタッチで、人差し指でぎこちなくつつき始めます。
これは判断に迷います。まず壁際でバンザイのままガニ股で立っているというシュールなポージングで、どうエロい反応をしたらいいのか迷います。拘束という設定が入っているので、「らめぇぇ、やめてイッちゃうう!!」と腰を振り立てるのが目標なのでしょうが、経過時間が2、3分で触り方がまだ非常に軽い、“アン”と声を出すことも相応しくないような触っているかいないか分かりにくいタッチです。
じゃあ、恥ずかしがってもじもじするのが正解かな、いや、そもそもお客様が纏うそこはかとないMオーラとS風味のあるプレイのギャップをどう解釈するか…。
試合開始のゴング早々、この後の出方を探っているところで、私の前に蹲るお客様から“お言葉”をいただきました。
「あのー…我慢せずにイッていいんですよ?」
あっ、今イクところでした!? と慌ててイッておきましたが、テンションが求められていたものと合っていたかどうかは未だに疑問です。それでなくとも、イクことを許可するってどれだけテクニシャンなの? えっ、それ今言っちゃうの? と女性がもやもやしてしまう危険なワードなのです。ということで、
「イッてもいいよ」は素人さんにはオススメできません。
セックスに限らず、人間関係ではあらゆる場面でタイミングは重要ですよね。女の目線で見ると、プライベートであってもプレイ中に行為に没頭しているとは限らないので、他のことを考えている時に一方的に「イッていいよ」なんて言われても、非常に滑稽に感じるものです。「興奮してイッちゃった」という話を聞いたことがないわけではありませんが、「逆にシラけるから、そういうことは言わないでほしい」という意見の方が多いように感じます。