「必要なのは卑猥感! 美しくあってはならない」昭和エロスを追及する孤高のAV監督・ヘンリー塚本インタビュー

 
――今回の『昭和三部作』シリーズには、現役のAV女優から約20年前に活躍したAV女優まで幅広く収録されていますが、AV女優の変化は感じますか。

「最近の女の子はマスターベーションひとつとっても上手いし、すぐに性の世界に入っていけるんです。今の子のほうがセックスに関してはやりやすいですよ。昔はカメラの前でエッチするのが恥ずかしいって子もいましたけど、今は皆無です。ただ私の世界に来る以上は、“下の毛だけでも隠そう”みたいな、脱ぐことに恥ずかしさを感じてほしいし、パパパーンって脱ぐような感じにはさせないようにしますね」

――その辺で頭の良さや清潔感が重要になってきますよね。

「恥じらいとはなんぞやって言った時に、すぐに理解できる力が必要ですね」

――平成生まれのAV女優も増えていますが、その世代の子たちに昭和のエロスを理解させるのは難しくないんですか。

「日本人の血が流れていますから、田舎に連れて行って絣やモンペを着せますと、すぐに百姓になります。そりゃあ時代考証もないまま、何も知らない監督がやったら駄目でしょうけど、私が現場に行って、その時代の雰囲気を漂わせれば自然と様になってくるんですね。動きにしても鍬の使い方や風呂の入り方まで、僕の生きてきた時代のことを教えてやりますから女の子も理解してくれます」

 

 
――脚本を書く際に、特定のAV女優で当て書きをすることもあるんですか。

「面接していいなと思ったら、その時点でこういうドラマを描こうって頭に浮かぶんですよ。たとえば『嫁ぐ妹の愛おしき股ぐら』(『女たちの昭和 嫁と娘とお姉ちゃん/男の慰みの為に女の肉体は美しき』収録)のなつみという女優さんは、FAの作品に多く出ていただいたんですけど、品があって頭が良くて、実際の生い立ちは分からないけど育ちが良さそうで、まさにFAが求めている女優さんなんですね。そういう子に貧しい役をやらせたり、近親相姦をやらせたりすると、素晴らしい雰囲気を醸し出してくれるんです」

 

なつみ

 
――かつては、なつみのようにFAプロ作品にたくさん出るAV女優が何人もいましたよね。

「私自身が気に入ってしまうと、ひとつの作品だけでは描き足りなくなるんですよ。こういう内容にも出てほしい、こういう女性を演じてほしいと、いっぱい構想が出てくる。それらすべてを描き切りたいから、何度も起用していたんです。いい女優さんは“1本や2本で、はいサヨナラ”とはできなかったんですよね。今は会社にスタッフも増えて、それぞれの分担がありますから、広報とかが『この女優さんは、これぐらいで切り上げて。この女優さんが売れているから使ってください』とか言ってくる(笑)。昔なら私もはねのけてやっていましたけど、今は若手の意見も取り入れて柔軟に対応するようになったんです」

――一条綺美香さんを専属にしたのも、いろいろな役をやらせたいという気持ちがあったんですか。

「そうですね。毎年、昭和の女性を描いていますから、メインとなる女優さんが欲しくて、面接した時に『この子だ!』と思ったんです。『女中君子43才の下半身』(『女たちの昭和 好き者女たちの生きとし生ける日々…/女は卑しきもの、されど女体は愛おしき』収録)では未亡人の女中を演じてもらったんですけど、今の季節なら夏の風景の中で百姓のお母さんをやらせてみたいですね」

――一条さんの演技はいかがでしたか。

「最初は演技が下手で苦労しましたけど、一条綺美香の中に昭和の魂を吹き込む努力をしました。それに応えて精一杯やってくれる彼女の熱意は現場で伝わってきましたね」

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