春が盛りの今日この頃。春といえば、新人の季節である。新しく入学した学生や新入社員たちが街を行き来する姿もよく見かける。
なかには、気分が高揚して、つい羽目を外してしまうような方もいるのではないだろうか。
明治37年(1904)のこと。千葉県出身の女性“お増(21)”は、上京して女子職業学校に入学。湯島の斉藤方に下宿して通学するようになった。
ところがこのお増さん、ほどなく学業よりも自由恋愛に夢中になってしまう。単身東京に出てきた開放感から、遊び心が発動してしまったのかもしれない。
ちなみに、彼女の様子を新聞記事は「たちまち男狂いを始め」などと記してある。当時の新聞では、現代では考えられないような表現が非常に多く使われていた。
さて、男遊びの毎日を送っていたお増さんだったが、下宿していた斎藤さんの家はいろいろうるさかった。おそらく、帰宅が遅くなったりすると、いちいち忠告するような感じだったのだろう。若い娘をあずかる下宿先としては、べつにおかしくはない。
だが、お増さんからすれば、余計なお世話である。彼女は別の下宿先、増田さんの家に引っ越した。こちらの家はあまり下宿人に干渉しなかったようで、彼女は思う存分、遊びまくった。