その路地の端っこで、道行く酔客に目を凝らすオバちゃんの姿。しかし記者の足は、オバちゃんが声をかけるより一足早く狙いを付けていた一軒のスナックの扉を押した。
「こんばんわー」
カウンターの中には、ロングヘアーの四十路後半の女性が座っていた。そして、一見客の記者を見て女が呟いた。
「このお店、どういうところかわかってる?」
もちろん、そのために来たのだ。1本1000円の小瓶ビールで乾杯し、しばしの世間話のあと1万1000円を渡す。すると、女性は扉にカギをかけ、記者を二階に案内した。万年床のせんべい布団に裸で横たわると、女の髪が記者のカラダを撫でるのだった。
腰を振るとガタガタ、ギシギシときしむ建具。さりとて、振らなければ終わりも見えない。建物も女も、古き都と同じく長い歴史がそこにあった。
(写真・文=松本雷太)