前回は、金沢の元赤線街・石坂の連れ出しスナックを紹介した。(※1)しかし、赤線(公認の売春地帯)があれば、その周囲にできるのが青線(非公認の私娼街)であり、石坂に寄り添うように存在したのが、『新天地』と呼ばれる青線街だった。
(※1)『金沢、旧赤線街の連れ出しスナック:古都で袖振り合った美女』はコチラ
「存在した」と過去形で書いたが、実は今もその路地は片町交差点近くに存在している。金沢で最も賑わう交差点から徒歩2、3分、いまだに路地の入り口には『新天地』の看板が掲げられている。
しかし当然、今のその路地は青線街ではなく、小洒落たカフェや飲食店、雑貨屋が並び、昼間でも人通りは少なくない。
この分だと夜も健全な路地に生まれ変わっているのだろうと思っていた。しかし、記者の鼻孔をくすぐる妖しい香りのスナックも残っていた。
22時を回った頃、石坂から新天地の路地に舞い戻ってみると、狭い路地には古ぼけたスナックの看板が、切なくもれる吐息のようにぼんやり灯っていた。