リン氏が言うには、私が訪れる少し前までは“ストリップ”が流行っていたそうだ。といっても、公にできるものではなく、ビルなどの一室でコッソリと行うモグリのものだったという。
「なぜかわからないけど、中国人はストリップが好きです。だから、日本で爆買いをする一方で、朝から浅草のロック座に並んでいたりします(笑)」
とも教えてくれた。そういえば、中国の葬式では個人を偲ぶために(?)ストリップに似たショーが行われるという話を聞いたことがある。そのことも関係するのだろうか…。
リン氏が言った「郊外での楽しいこと」も、そのストリップのことだった。私はインサート系の楽しみは諦めていたので、あまり期待もせずにリン氏について行くことにした。
このとき私は、北京でもっともにぎやかだと言われている東城区にいた。北京でも屈指の商業地区で、繁華街も多いため、東京にいるような感覚だった。
しかし、たどり着いた大興区は、現在でこそ2017年に国際空港が開港予定であるために開けているが、当時は広大な大地が広がっていた。
しばらくすると、スイカ畑が広がる場所に、薄暗い灯りを漏らす掘っ立て小屋のようなものが見えてきた。そのまま眺めていると、その中に人々が吸い込まれるように入っていく。するとリン氏が、「あそこが会場です」と指さした。
それは、まるでサーカスのテントのようだった。事実、北京でストリップの営業ができなくなった業者が、移動式のテントを持って町から町へと渡り歩いていた。まさにサーカスの一団と同じだ。
日本円で一人1,500円ほどの木戸銭を払って中へ入る。50人も入れば満員状態の狭い空間だった。それでも、このときは客席の半分も埋まっていなかった。
トイレなどの設備はなく、天井の布などに“ほつれ”があるなど、決してキレイとはいえない。見世物小屋の雰囲気だ。
待つこと15分。リン氏が「始まるそうです」と声をかけてくる。中央の客席よりも20センチほどだけ高いステージを見ていると、ひとりの女性が出てきた。ベージュのキャミソール姿は色っぽかったが、化粧っ気がないため、最初はスタッフなのかと思った。
しかしその女性は、BGMも流れていないのに、いきなりキャミを脱ぎ始める。すると、ステージの後方から男性の怒鳴り声が聞こえ、客席からはクスクスと笑い声が漏れる。リン氏に聞いたところ、言葉の主は「音響の調子が悪いから、もう一度やり直してください!」と言っているのだという。どうにもお粗末な展開だ。
脱ぎ捨てたキャミソールを拾い、そそくさとバックステージへ消えるストリッパー。約1分後、音楽に乗ってふたたび現れ、脱ぎ始めたはいいものの、コチラにすればシュールなコメディを見ているようだった。恥じらいながらも一生懸命に舞う姿に、美しさと感動はあったが…。
郊外とはいえ“もしも”のときを考えているのか、パンティは脱がず、キャミを脱いでブラジャーを外したものの、バストトップは決して見せないというスタイルだった。ルックスは田舎の素人娘といった感じであったが、そのテクニックはプロフェッショナルだった。