直後に電話がかかってきた。店長は開口一番、
「困るよぉ~! さっきアップした写メ日記、削除して!」
と言った。どうやら、店のホームページで開設している“女のコの写メ日記”で問題が起きたようだ。
その数分後、パソコンのモニターを見て、「よし、OK」とつぶやいたところで、問題は終息したように見えた。ということで、恐る恐る「どうしたんですか?」と聞いてみた。
写メをアップした女のコを仮にサチコちゃんとする。彼女は、お店の中でベスト3に入るほどの指名数を誇る人気の女のコだ。それに、金曜日や土曜日などお客さんが集中する週末に積極的に出勤してくれるので、お店としてもありがたい存在でもあった。
そんなサチコちゃんが、一週間前に「次の18日の金曜日は急用ができてしまったんで出勤できません」と申し出たという。
彼女が18日に何をしていたのかといえば、映画館にいた。そう、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』を見ていたのだ。
18日に世界同時公開された人気映画シリーズの最新作『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』は、週末の北米(アメリカとカナダ)映画興行収入が約288億円とハリウッド史上最高を記録。言うまでもなく、日本でも初日初回上映のチケットはプラチナ化していて、サチコちゃんは運良く目撃者のひとりだったわけだ。
この作品は、数年前に制作が発表されてから上映当日まで、内容をはじめとするほぼすべてにおいて情報には箝口令が敷かれていた。登場するキャラクターの名前こそ発売された玩具などで判明していたが、それでもキャラクター同士の相関関係などの詳細は不明のまま。一般公開に先駆けて現地時間の12月14日にハリウッドで行われたワールド・プレミアム上映では、取材をするマスコミも制限されていたし、情報公開に関する厳しい内容の契約書も交わされたという。
さらに、制作者サイドも厳しくチェックしていたので、情報漏洩と思われる書き込みなどには、徹底的に削除をしていたというウワサもある。それゆえに、SNSで個人が情報発信できるご時世ながらも、ネタバレ的な書き込みは、ほとんど見られなかった。
この流れは18日に一般公開されても、「まだ観ていない人のために」と、暗黙の了解的に、また映画ファンのマナーとして内容を伏せる傾向にあった。事実、映画館によっては、金曜日夕方の公開初日よりも、仕事が休みの翌日の土曜日のチケットのほうが人気があるところもあったほどだ。
そういった事情を知らなかったのか、サチコちゃんは写メ日記で「チョー楽しかったよ! 最後は…」とエンディングまでネタばらしをしてしまった。