狭いニッポン列島だが、それでもその土地土地に独特のお国なまりやご当地料理があるように、風俗も形や名前を変えて存在している。
九州地方ではあまり有名ではないが、大分駅近くにも歓楽街があり、そこに少し変わった風俗店がある。
大分駅の正面に伸びるアーケードの商店街を抜けた先に広がるのが、都町(みやこまち)の歓楽街だ。大きな「ジャングル公園」の隣に、中洲を彷彿とさせる派手なネオンのビルが並んでいる。
その街を歩いている時、不思議な看板を目にした。路地の隅にある置き看板には、店の名前と「1万円」という料金しか書かれていない。風俗店だとしても、普通なら『サロン○○』や『クラブ××』などと、業種が書かれているはずだが、その看板には何もない。
自然と足が止まり、その看板を見つめていると、五十路のオバちゃんが声をかけて来た。
「お兄さん、遊んでっちくり」
「これお姉さんのとこ? ナニ屋なの?」
調査というよりは普通の疑問だった。すると、
「マメ屋じゃっちゃ」
「…マメ屋? …じゃっちゃ?」
たしかそんなようなことを言った。かろうじてわかった「マメ屋」とは、九州地方で使われるちょんの間などの意味だ。オバちゃんはそこまで言って、こちらが地元の人間ではないと気付き、標準語に近い言葉に切り替えた。
「パツ屋ですよ。若いコもおるけんね」