東京発フェティッシュファッション写真集! 性的嗜好とファッションの融合か、それとも…

※画像:『FETISH FASHION .Tokyo フェティッシュファッション・ドット・トーキョー』芸術新聞社
PHOTOGRAPHY Takahiro Watanabe
HAIR & MAKE-UP Hirari Ikeda
STYLING Kenji Nagasawa, Hirari Ikeda
MODEL Hirari Ikeda

 
 レザー、ラバー、ボンデージなどのいわゆる、フェティッシュファッション。それを東京発というカテゴリでまとめた写真集『FETISH FASHION .Tokyo』が10月10日に芸術新聞社から発売された。

 東京はもちろんのこと、世界中で今もっともアツいフェティッシュファッションの発信地であるイギリス、ドイツ、その最新トレンドを網羅した内容となっていることもあり、ファッション業界のみならず、フェティッシュファンも注目の一冊だ。

 その内容はというと、世界的に名高いイギリスのラテックスブランドを率いるトップデザイナー、“Atsuko Kudo(アツコ・クドウ)”のインタビューやフェティッシュファッションの用語集も取り上げられるなど、フェティッシュファッションを愛する人には、垂涎の的となっている。

 この本を生み出したのは、原宿、表参道にあるフェティッシュファッションのセレクトショップ、“For Your Pleasure”オーナーであるケンジさん。そもそも、フェティッシュファッションとはなんなのだろう?

「フェティッシュファッションというと、どうしても、SMやエロなど、性的嗜好イメージを持っている人がまだ多いと思うんです。でも、例えば、ラバーのキャットスーツはそこに性的な興奮を得る人たちばかりじゃなく、ビジュアルとしてかっこいいという人もたくさんいる。性的な嗜好とフェティッシュファッションは必ずしも結びついているわけではないと僕は思っています。今回の写真集ではスタイリッシュにファッションとしての視点から見たものを、“フェティッシュファッション”と定義しています。僕は、それを世の中に提示して、新たな価値を創造したいと思っています。そんな思いでこの本を作りました」

 

PHOTOGRAPHY Takahiro Watanabe
HAIR & MAKE-UP Hirari Ikeda
STYLING Kenji Nagasawa, Hirari Ikeda
MODEL Hirari Ikeda

 ケンジさんによると、SMが好きだったり、実際にそういった嗜好があるわけではない。でも、ラバーやボンデージなどをフェティッシュなファッションとして好む層は確実に存在するという。そんなお客さんやアパレル関係者に向けてフェティッシュファッションのフリーマガジンを作り始めたことが、この写真集が生まれるきっかけとなった。表紙も含めて毎回撮り下ろしという豪華なフリーマガジンで、名前は『INFAMOUS MAGAZINE(インフェイマス・マガジン)』。

 これがとても好評だったこともあり、季刊で、はや10号目を刊行。それをまとめたものが今回の写真集だ。とはいえ、本の出版に当たり新たに作られた新規ページも盛りだくさん。東京発ということもあり、表紙には、原宿のファッションアイコンとして絶大な人気を誇る池田ひらりさんを起用。ドイツのラテックス専門誌『MARQUIS(マーキス)』や国内でも有名なラテックスブランド“Kurage”さんの作品、さらには常にラバーを着ているというマネキンダンスデュオ、“FEMM(フェム)”も紙面に登場する。

 

PHOTOGRAPHY Takahiro Watanabe
HAIR & MAKE-UP Wakamiho, Namada, Chiaki Hino
STYLING Kurage
MODEL Wakamiho, Maroro, Namada, Towako

 
 フェティッシュファッションのエロティシズムを知り尽くしたケンジさん。自身も、レザーファッションブランド“AIXO(アイゾウ)”を持ち、“フェティッシュファッション”好きだと公言する。

「僕自身、女性ならではのエロティシズムと凛としたものが合わさったようなファッションが作りたいと常々思っています。お店を始めた動機も、自分が作ったデザインの商品をファッションとして、置けるお店がないということからなんですよ」

 

PHOTOGRAPHY Takahiro Watanabe
HAIR & MAKE-UP Chiaki Hino
STYLING Kenji Nagasawa
MODEL Cocoru

 
 フェティッシュをファッションとして捉える。全く新しい試みとあって、正直、賛否は分かれるかもしれない。秘められたものだからいいのに、というマニアの人もいるだろう。

 しかし、ケンジさん自身が、女王様や緊縛師といったフェティッシュ業界の人たちを日々、相手に仕事をして、その感覚を熟知した上で、あえてファッションとしてのフェティッシュを打ち出すからこそ、意味があるのではないだろうか。

「全くそういった業界との繋がりなしに“これがフェティッシュです!”といっても説得力がないと僕は思っています。僕のお店には、フェティッシュ業界の人たちもお客さんも多く訪れますし、常に身近な存在です。そういったバックボーンの上で、僕が肌で感じるフェティッシュファッションをこの本では取り上げています。フェティッシュ業界の人たちのリアルな肌感覚を知った上で、フェティッシュファッションを提示しないとただの借り物でしかなくなってしまうと思います」

 

PHOTOGRAPHY Peter W. Czernich
HAIR & MAKE-UP Angi Delrey
MODEL Psylocke
Latex by MARQUIS

 
 フェティッシュをこよなく愛するケンジさんの今後の目標は、フェティッシュを確固たるカテゴリとして成立させること。デパートに“ロハス”といった切り口のフロアがあるように“フェティッシュ”というフロアがあってもいい。そこには、衣類だけでなくフェティシズムやエロティシズムに関する食べ物や家具、雑貨などが所狭しと並ぶ。今後はそんな新たな価値観を東京から世界に広めていくことが理想だという。東京発のフェティッシュファッションの今後に益々目が離せなくなりそうだ。
(取材・文=菅野久美子)

協力:For Your Pleasure
http://www.foryourpleasure.jp/
FETISH FASHION .Tokyo
http://fetishfashion.tokyo/

 
菅野久美子(かんの・くみこ)
アダルト系出版社司書房を経てAV情報誌やホスト雑誌、女性週刊誌で活動。
現在フリーのライター。
著書に『アダルト業界のすごいひと』(彩図社刊)がある。
8月10日に2冊目の単著となる『エッチな現場を覗いてきました!』(彩図社刊)を発売。

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