違法な堕胎で女教師や尼僧などが次々と起訴された事件


 実は、違法な堕胎事件はそれほど珍しいものではない。この同じ年の11月、今度は岐阜県の病院で50人以上の検挙者を出す堕胎事件が起きている。ほかにも、大正9年には三重県で違法な堕胎を行っていた66歳の女性が逮捕され、40名ほどの女性が検挙された。昭和2年には島根県で80歳の助産婦が堕胎を重ねていたことが発覚した。

 ほかにも同様の事件は多い。大阪の事件は、その中でもとくに規模が大きかったために、とくに注目されたということである。

 現在でも、妊娠中絶は正規の手続きを経なければならない。ただ、現在では性能のよい避妊具や、効果的なピルなどが普及しているためだろうか、違法な堕胎が発覚したという事件はみかけない。

 戦前当時の新聞記事を読む限り、その行動、男女の行為については、現在とあまり変わりはないのではなかろうか。避妊についての環境が変わっただけで、戦前がとくに貞操観念が強かっただとか、現在の男女が無軌道だとか、そんなことはまったく感じられないのである。
(文=橋本玉泉)

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