そういえば、M氏に送ってもらったタモンで驚いたことがあった。それは『無料案内所』の存在だ。
そう、歌舞伎町などにある風俗店やキャバクラを案内するあのスポットだ。興味本位で覗いてみると、日本と同じようにパソコンが置いてあり、マッサージパーラーやストリップシアターなどの案内が表示される。大義名分として焼肉店などの飲食店の案内が表示されるところも日本と同じだ。そのほかにも、アダルトグッズショップを冷やかしで覗くと、同僚がレジ前で“あるもの”を見つけた。それは名刺で、『DERIHERU』と書いてあった。つまり、デリヘルだ。見れば、島全体どこでも派遣してくれるという。
実はこの時の宿泊先は、島の中心地のタモンから、かなり外れた場所にあった。というのも、前述の通り、この島を訪れるのは観光目当ての家族・カップルがほとんどだ。それゆえにホテルはファミリー向けの造りであり、ビジネス用のシングルルームとなると、街の中心のタモンには、ほとんどないのだ。ということで、我々は少し山側の地域のシングルルームのあるホテルに泊まっていた。その部屋はシングルベッドに折りたたみの机と椅子、テレビがある程度の簡素な部屋で、仕事で訪れて宿泊するには充分だった。
しかし、夜、寂しくなるのは、どこでも同じことであり、同僚と顔を見合わせた結果、「呼ぶか?」となった。
コールすると、先方は日本語対応ができ、「今ならば、韓国人、フィリピン人、アメリカ人の女のコがご用意できます」とのこと。せっかくのグアムである。迷わずにアメリカンガールを指名したが…。
ノックされ、ドアを開けて驚いた。そこに立っていたのは、ジェシーと名乗るアメリカンガールであった。確かにアメリカンで間違いはなかったが、小錦級の巨体だったのだ…。ジェシーだったら、高見山だろうという、どうでもいいツッコミを入れる気力を奪われるほどの巨体だった。
200ドルを支払うと、いきなり「カモン!」とコニシキガール。ベッドで仰向けになって“おいでおいで”をするのだが、彼女がシングルベッドに寝そべると、そこには本来あるべきもうひとり分のスペースはなくなっていた…。国内外で風俗遊びをしてきて、このようなことは初めてで対応に困った。すると、ジェシーもそれを察したのか「ソーリー!」と言いながら、テーブルに手をついて、巨尻を突き出してきた。スタンディングのバックスタイルで「カモン!」というわけである。
「入っているのだろうか?」という疑問を持ちつつ、パイズリならぬ『尻ズリ』という展開になったが、それはそれで肉棒への圧迫感があって、なかなか良かった。こちらがガンガン突くと、かなり演技くさいものの、「アウッ!」と悶えるジェシー。それは獣のようで、隣の部屋からも似たような声が聞こえてきた。ということは、同僚も似たような状況だったのだろう。
「モア!」とジェシーが叫ぶので激しく腰を動かした数秒後のこと、“バタンっ!”という何かが激しく閉じるような音と、“ブギェ!”という怪獣の鳴き声のようなものが部屋の中に響く。そして、目の前には信じられない光景が…。
ジェシーの重さに耐えられなくなった折りたたみ式のテーブルが、谷折りで閉じてしまったのだ! そして、ジェシーは、それに挟まれたカッコウだ…。
それはまるで、食虫植物のハエトリ草にハマった巨大なダンゴムシのようで、興醒めを通り越して、彼女には失礼ながら笑いをこらえきれずにいた。しかし数秒後、それは止まった。なぜならば、ジェシーは額から出血していたからだ。髪の毛が乱れていたこともあって、往年の大巨人レスラーのアンドレ・ザ・ジャイアントの流血シーンを彷彿させる不気味さだった。
「OK! OK!」とニッコリ笑った彼女は、血の流れる額をティッシュで押さえながら服に着替え、部屋を出て行った。帰り際、「ソーリー」と申し訳なさそうに謝るジェシーの力のない笑顔が、南国の暑い夜に溶け込んでいった…ような気がした。発射はできなかったが、考えてみれば、国内外問わず、風俗嬢に謝られたのは後にも先にもこの一度だけであり、それゆえに印象に残っている海外風俗である。
(文=美田三太)
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