「よっ! お姉ちゃん、足りる?」
気さくに支配人に話しかけるアノ人。そして、「24時、回っちゃうけど…」と少し心配して聞いていた。それは条例で特殊浴場の営業時間は24時までと決められていたからである。ちなみに、特殊浴場でのサービス内容は「お客さんとの自由恋愛」という建前のもとに成り立っている。
「当店は浴場であって、あとは女性との“自由恋愛”ですから」
支配人がそう言うと、アノ人もニヤリと笑みを浮かべてお付きの弟子を促して、封筒を5つ渡したという。可南子さんが同僚の女のコに聞いたところ、封筒ひとつにつき1万円札の束が入っていたそうで、単純計算すると…豪快な額だ。
そこからは全館あげての『裸祭』だったという。ちなみに可南子さんは、弟子の中でも古株の「酒の肴みたいな名前の方」がお相手だったそうで、ごくノーマルに遊んだとのこと。しかしお楽しみ中に突然、扉が開いたそうで、そこに立っていたのはアノ人。
「師匠、なに、そんなところに立っているんですか?」と弟子が問えば、
「バカヤロー、俺は勃っているんだ!」
とアノ人は、股間の辺りでV字ラインを書くような、おなじみのポーズを決めたそうだ。そして、乱入して可南子さんの穴に弟子と「ずいずいずっころばし…」とお遊びに興じたという。
どうやら、アノ人は時折、吉原のソープを貸切にして弟子たちを労っていたようだ。
「でも、アノ人が還暦を過ぎるとご無沙汰になったみたい。いずれにしても、今あんな豪快な遊び方する人はいないわよね~」
自由恋愛とはいえ時間外営業はもってのほかであるが、豪快な男たちが消えて久しいことを嘆く可南子さんであった。
もちろん、本来、やってはいけないことであり、今だからこそ話すことができる。それが“時効風俗”の世界である。
(文=子門仁)