この資産家男性も、それは十分にわかっていた。そこで男性は、岡山市内で商業を営む42歳の男を月当たり60円の報酬で雇うことにした。60円というと、現在なら10万円から15万円くらい、そこそこの金額であると考えられる。そしてその42歳男に、「自分とセックスしてくれる処女を探してくれ」と依頼したのである。こうして、男2人による「処女千人斬り計画」が開始された。
地元で商売をしていた42歳男は、各方面に顔が広かった。そのコネを利用して、片っ端から女性を物色した。もちろん、女性にはそれなりの報酬を支払うという約束でである。
その結果、OKという女性が次々に現れた。年齢は13歳から15歳を中心におもに10代の女性たちだった。内訳は、生徒や学生をはじめ、看護師やバスガール、その他下働きの女性などいろいろだった。そうした女性たちは、2円から5円程度の金額を受け取って資産家男性と関係していた。
だが、ほどなく「地元の金持ちが少女たちをカネで買っている」という噂が広まり、警察の耳にも入った。警察も、さすがに10代の、年端もいかない少女たちばかりを漁っているとなると、無視するわけにはいかなかったようだ。
ところが、捜査は難航した。旧民法でも、13歳以下の女性との性行為であれば違法となる。しかし、いずれの女性も13歳以上であり、しかもレイプではなく合意の上である。該当する容疑が見当たらない。そこで警察は一計を案じ、資産家と関係した少女数名の協力で彼女たちの局部を医師に診察させた。すると、ひとりの局部に損傷があるとの診察結果を得た。これをもとに、資産家の男と、さらにスカウト役の42歳男を逮捕したということであった。
結局、男の大願は処女34人でストップすることとなった。この後、資産家男が再び「大願成就」に行動を再開させたかどうかはわからない。ちなみに、34人の少女たちとのセックスだけでも、彼は総額で6000円から7000円、現在の価値で百数十万円は使っていたといわれる。
いずれにせよ、「処女千人斬り」など、やはりまず不可能に近いことと思っていたほうがいいようだ。もし、「オレは処女千人とヤッた」などという男がいたとしたら、大ウソツキに違いなかろう。
(文=橋本玉泉)