「指定された部屋に行ったら真っ暗で…。でも、気配はするんです。さすがにヤバいと思ったんですけど…」
新宿のデリヘルで働くアイコさん（仮名）が、ある日、歌舞伎町にあるレンタルルームを訪れた時のことである。
まず、考えていただきたい。呼ばれて部屋のドアを開けたら真っ暗なのである。それでいて何かしらの気配があるというのである。恐怖である。稲川淳二の世界だったら確実に見えないものが見えてしまうシチュエーションだ。そしてやはり…出てきたのだ！
「お客さん…でした。でも、部屋の電気を点けないんです。そのレンタルルームはシャワーが共有で、一度、部屋から出なくてはいけないんですけど、それを渋って…。でも、『それじゃプレイができないから』っていうと、頭からスッポリとタオルをかぶって…」
普通、部屋からシャワーまで移動する時は、タオルは腰に巻くものであるが、アイコさんいわく「私とお客さんの分の2枚しかなかった」ため、その客はモロ出しで移動したという。リアルな「頭隠して尻隠さず」である。
なぜ彼は顔を隠していたのか。それが、のっぺらぼうだったら稲川淳二の世界だが、答えはシンプルで、彼が芸能人だったからである。
「シャワーでも、ずっとうつむいていました。普段、トリオで活動されている方ですが、三人の中では一番目立たない方で、正直最初は気付かなかったんです」
しかし、「俺が来たって、絶対に言うなよ！」を繰り返され、アイコさんは「これって、言ってほしいという“前フリ”かしら？」と思ったという。
その後、部屋に戻るもやはり一切の灯りを点けないため、アイコさんが「もしかして“暗闇プレイ”がお好きなんですか？」と質問すると、“待ってました！”とばかりに彼はこう答えたという。
「“危機管理”に決まってるでしょ！ どうして、グルメで知られ、贅沢もできる俺が、こんな狭いレンタルルームにしたか分かる？」
と、まずは危機管理を前面に押し出してきたという彼。そこまでして風俗に来なくても…という話はさておき、その後は、さぞかし自分は本当はスゴイということを前フリ…いや、前置きしたうえで自慢ばかりだったとか。
ちなみに、レンタルルームにした理由は、部屋には窓が無く、隣のビルからの盗撮の心配がないからとのこと。「仮に盗撮されても、それを見たところで誰も喜ばないと思うけど」とアイコさんは語るが、正論である。
「俺のような有名人は狙われているから…」と、それゆえに部屋を真っ暗にしているとのことだった。だったら、風俗で遊ばなければいいじゃん！ そう思ってしまうものだが、やはり、芸能人は我々一般人とは思考回路が少しだけ異なるのかもしれない。
「ここならば、たとえ部屋にカメラが仕掛けられていても何も映らない。それに、これだけ狭いと、たとえカメラが隠されていても探しやすい。あっ、安心してね。キミが来る前にチェックしたから！ まぁ、俺のような芸能人が、まさか2,000円程度のレンタルルームを使うとは思わないだろ？ これも相手を欺く作戦だから言うなよ、絶対に言うなよ！ 俺が客だったことも絶対に言うなよ！」
これをやはり、「言え！」という前フリだと思ったらしく、筆者に教えてくれたアイコさんなのであった。
（文＝子門仁）