ここである男性のお話を。現在50歳の竹山浩一さん(仮名)は、高校卒業後に商社に就職。夏のボーナスが出た時に先輩が「おごってやる!」と連れていかれたのが堀之内のソープランドでした。
ちなみに当時の竹山さんは童貞で、 彼は彼なりに、“好きになった彼女と…”と思っていましたが、彼女はいません。ルックス的にもできそうにないと諦めた彼。ということで、ソープで童貞を捨てることにしたのです。
さて、いよいよ個室で…となった時のこと。 出迎えてくれたのは、やや年増なもののキレイなお姉さんでした。先輩から教わったように部屋で彼女にサービス料金を払った竹山青年。そうです、現在はフロントで一括精算するソープランドも多くなっていますが、当時は入浴料金とサービス料金は別々に払うことが主流でした。
しかし、彼の所作がぎこちなかったのでしょう。相手の泡姫は気付きました、彼が初めてだと。そして、竹山青年の気持ちを悟ったのでしょう。
そこで、泡姫は彼のシャツのポケットにサービス料をねじ込んで、こう言いました。
「私、今日はあなたの彼女だから、サービス料はいただけないわ」
そう言いながらキスをしてきた泡姫。それは彼女の気持ちでした。当時はまだ、ソープ嬢は「カラダを売っても心は売らない」という気持ちで、お客とキスをしないことが多かった時代です。ですから、そのキスが恋人の証だったのです。その後は恋人のように接してくれて、無事に童貞を捨てた竹山さん。
さて、その泡姫の計らいにとても感激した彼は、ある行動に出ます。
「なんて素敵なところなのだろう!」
童貞を捨てた場所に対して、そう思った竹山さんは現在、堀之内のソープランドのボーイとして働いています。あの素敵な思い出を忘れないために…。
そして、現在、彼は数年に一度程度で訪れる童貞と思われる客に、有無を確認。もしも童貞だった場合は「いつまでも待ちなさい」と帰してしまうそうです。自分は“いい思い”をしたのになぜか?
「だって、昔は粋なお姐さんがいたけど、今はねぇ(苦笑)」
そう言って、少し残念そうな顔をした竹山さん。たしかに、昔のソープランドには、そんなお姐さんがいて人情味に溢れていた店が多かったように思う。それは究極の“裸の付き合い”が生み出した賜物だったのでしょうか…。
(文=子門仁)