アイドル界では、今年1月にエイベックス所属の5人組グループ「東京女子流」がアーティスト宣言し、アイドル専門誌への露出やアイドルフェス出演を止める方針を打ち出している。だが、6月に中国・上海で開催されるアイドルフェスに中川翔子(29)、でんぱ組.inc、SUPER☆GiRLSとともに出演することが明らかになっており、アーティスト路線が徹底されているのかは疑問だ。
また、かつてアイドル声優として人気を博していた平野綾(27)は「私は声優でありたい。アーティストでありたい。表現者でありたい」などと自身のブログで発言。これが「切り捨てられた」と感じた声優ファンの反発を生み出し、さらにはスキャンダルの影響もあって人気を失ってしまった。同じくアイドル声優として活躍していた椎名へきる(41)もアーティスト路線への転向をきっかけに支持を失っており、そういった人気凋落のパターンを揶揄する「アーティスト病」なる言葉もある。
アイドルからアーティストに上手にステップアップしたのは、近年では世間に音楽性が認められて無理なく移行できた「Perfume」くらい。また、きゃりーぱみゅぱみゅ(22)は「あたしアイドルじゃねえし!!!」と題した雑誌連載をするなどアイドル路線の拒絶を明確に打ち出し、アーティスト枠に自然に収まっている。だが、どちらもプロデューサーである中田ヤスタカ(35)の音楽性に依拠する部分が大きく、他のアイドルが簡単にマネできるものではない。
大半の「アーティスト宣言」は前述のように死屍累々の状況なのが実情だ。
「アーティスト宣言は『アイドルのポジションを捨てて、もっと上の存在になりたい』と言っているようなもの。アイドルを低ランクの仕事と見なしていることが不信感を生み出し、従来のファンが離れることになる。かといって、実力がなければ新規のファンもつかない。ですから、単純にアイドル人気に舞い上がって宣言してしまった場合は失敗に終わるケースが圧倒的。過去の芸能活動を否定すればファンから逆恨みされる危険性もあり、自分から言い出すのはリスクが大きい」(アイドルライター)
乃木坂は3月30日付オリコン週間シングルランキングで新曲「命は美しい」が初動50万枚を突破し、10作連続での1位を獲得した。数字だけ見れば名だたるアーティストと遜色ないが、乃木坂の売り上げは握手券の付属やジャケット違いの複数タイプの発売など「アイドル商法」に大きく依存している。また、それを買い支えているのは紛れもない「アイドルファン」だ。
アイドル商法やアイドルファンを否定して、現在の人気と売り上げを維持できるのかは誰もが疑問を抱くところだろう。だが、本当に「脱アイドル」に成功すれば他に類のないグループが誕生する可能性もある。単なる「勘違い」でヒンシュクを買って終わってしまうのか、はたまた有言実行となるのか、白石をはじめとした乃木坂の今後の成長に注目だ。
(文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops)