■9位:清竜人25「Will You Marry Me?」(トイズファクトリー)
「清竜人、そして彼と婚姻した6人の妻たち」によるアイドルグループ。そのコンセプトゆえに話題を呼んだが、そこに過剰に批評性を見出そうとして批評の自己中毒に陥っている人たちは滑稽であった。
そう感じるのは、直観優先で生み出された楽しさに満ちているからだ。Aメロで女の子が世間の男子に不満を述べ、Bメロで清竜人が求婚し、サビではもう結婚しているという歌詞の構成も鮮やか。特にBメロのソウルフルなメロディーは秀逸で、ダンス☆マンが編曲したサウンドとともに見事なソウル歌謡を生み出した。カップリングの「ラブ ボクシング」もソウル路線の佳曲だ。
■10位:吉田凜音「M.I.R.A.C.L.E ~アイシタイキミガクル~」(VERSIONMUSIC)
北海道出身の14歳のデビュー・シングル「恋のサンクチュアリ!」のカップリング曲。3形態あるシングルの収録曲すべてがノーナ・リーヴスの西寺郷太によるプロデュースだが、彼のソロ・アルバム「テンプル・ストリート」やノーナ・リーヴスの「FOREVER FOREVER」といった2014年の作品群と肩を並べるクオリティだ。
特に「M.I.R.A.C.L.E ~アイシタイキミガクル~」は、イントロからエフェクトのかかったヴォイスと四つ打ちのキックが鳴り、嫌でも昂揚してしまうトラック。吉田凜音のヴォーカルも大胆にエディットされているが、そうした派手なサウンドがしっかりと吉田凜音の魅力を引き出す方向に作用しているのが素晴らしい。
以上がベスト10だが、見直してみると結果的に1位から8位までがすべてインディーズである。
次点としてまず挙げたいのは、吉田哲人によるアシッドなサウンドが鳴り響くチームしゃちほこの「いいくらし」。
BiS解散後にフリーで活動しているテンテンコは、ソロ・シングル「Good bye,Good girl」、かしぶち哲郎トリビュートアルバム「a tribute to Tetsuroh Kashibuchi ~ハバロフスクを訪ねて」収録の岡田有希子のカヴァー「花のイマージュ」がともに鮮烈だった。
BiS解散後に、BiSと非常階段によるBiS階段のまさかのセカンド・アルバム「2nd ALBUM」がリリースされたが、その最後を飾る「BiS_kaidan_2」はメンバーの声をエデットして架空の民俗音楽のように仕上げている。これはBiSの最果てだ。
エレクトリックリボンの「波音チューニング」は、NAOMi脱退前、Azumiがまだ加入したばかりの頃のシングル。この明るくもせつないメロディーはasCaの真骨頂だ。「TOKYO IDOL FESTIVAL 2014」のSKY STAGEで、青空の下で感傷とともに聴いたことを思い出す。
クルミクロニクルの「オレンジ(sing with cello)」は、ミニ・アルバム「17」の収録曲。「EDM女子高生」とも形容されてきた彼女が、チェロのみをバックにして歌った楽曲だ。受験のため現在は活動を休止中だが、来春の復帰が待ち遠しい。
ライムベリーの「プレイグラウンド#1」は、シングル「IDOL ILLMATIC」のカップリング曲。1分半ほどの短いトラックだが、バックトラックは硬派なヒップホップそのもの。MIRIのスキルの急成長ぶりとあわせて今後も楽しみだ。
ぱいぱいでか美の「ぼくがおっぱい大きくしてあげる」は、アルバム「レッツドリーム小学校」収録曲。三輪二郎とのあまりにもシンプルかつナンセンスなデュエットゆえに異様に印象に残る。
星野みちるの「雨のドリーマー」は、アナログ7インチ盤とCDというリリース形態が良かった。フィル・スペクター風味のドリーミーなサウンドに包まれた楽曲だ。
RYUTistの「チュララ」は、「Wind Chime! ~街のトンネル~」のカップリング曲。永井ルイの作曲によるブリティッシュ・ポップ風味の楽曲で、往年のタンポポも連想させられた。
武藤彩未の「Seventeen」は1980年代アイドル歌謡オマージュの傑作。デビュー・アルバム「永遠と瞬間」のセブンティーン盤に収録。
ベッド・インの「ワケあり DANCE たてついて/POISON~プワゾン~」は8センチシングルでのリリース。このCDを買った日に、ライヴハウスで偶然ベッド・インに遭遇したのだが、あれは私も1990年代バブル期にトリップしていたのかもしれない。
さて、もう書いている方はもちろん、読者どころか編集担当者も長くてウンザリしているところだろうが、「ある視点」賞を3作品挙げたい。