昭和30年8月20日発行(筆者所蔵)
価値ある文献が次々に姿を消していくなか、たいへん貴重な書籍が復刻された。渡辺寛氏の著書『全国女性街ガイド』である。
同書は売春防止法が完全施行される直前の昭和30年(1955)8月に刊行された、当時の赤線や青線を始め、歓楽温泉地や街娼が出没する歓楽スポットなど、女性と遊べるエリアについて紹介したガイドブックだ。
色里とか遊里とか呼ばれる、いわゆる歓楽街について紹介した書籍や資料は数多い。だが、その多くは地域を限定したものや、あるいは筆者の主観ばかりで占められたような、評論的あるいは創作的な内容になっているものなどが少なくない。
それに対して、この『全国女性街ガイド』は全国各地を網羅するとともに、それぞれのスポットについて、概要やアクセス、料金、特色などを簡潔に説明している。
そうした内容は、著者の渡辺寛氏自身が実際に訪れて取材した、つまり足で集めた内容である。その意味でも生きた情報であり、当時の歓楽街の状況を知るうえで非常に資料性の高い文献となっている。僭越ながら、筆者も拙著『色街をゆく』(彩図社)収録のルポを執筆する際に、同書は何度も参考にさせていただいた。
同書は一部ファンからは高い評価を受けていた。しかし、最近では入手が困難となっており、古書市場などでは数千円から数万円という高値がつくこともあった。