お騒がせセレブ、衝撃ヌードの波紋…黒人女性蔑視の声も


 表紙の写真は2種類ある。一つは、映画『ティファニーで朝食を』のオードリー・ヘプバーンを彷彿とさせる黒のベアトップドレスと真珠のネックレスを身に纏い、台の上でお尻を突き出すポーズをとりながら、シャンパンの栓を抜いている写真。飛び出したシャンパンが空中で弧を描いて、彼女の巨大なお尻の上に置かれたグラスの上に注がれている。

 もう一つは、後ろ向きでそのドレスをお尻の下まで脱いでいるセミ・ヌード写真。オイルが塗られた肌は艶やかに光り、お尻の割れ目もはっきりと見えている。

 そして、同誌の中に掲載されたアザーカットでは、ドレスを足元までずりおろし、胸も(乳首も)パイパンの股も露出したフルヌードまで披露している。

 写真を撮ったのは、70~80年代にファッション・フォト界で一時代を築いた著名な写真家、ジャン=ポール・グード。シャンパンの写真は、彼が70年代に撮った「シャンパン・インシデント」と呼ばれる、キムとまったく同じポーズを全裸の黒人女性にさせているものが原型である。

 今回の写真について多くのメディアは、彼女が2011年に、同じく米国のファッション誌である『W Magazine』でヌードを披露した時に、「本当はアートワークで裸を覆うはずだったのに! 乳首が映ってる!」と、アートワークが施される前の写真のドラフトを見て泣きわめく姿がリアリティ・ショーで放映されていたのに、それから3年後、自ら進んでまたフルヌードになっていることや、彼女が著名なグードに撮影してもらうために無償で仕事を引き受けたことなどを取り上げ盛り上がっているが、一方で、特にシャンパンの写真について、冷ややかな目で見ているものもある。

 黒人女性の身体的な特徴をフェティッシュにデフォルメしたグードの写真集『Jungle Fever』の中の一枚である「シャンパン・インシデント」は、グードの意図はどうあれ、黒人女性のお尻が、そこにモノが置けるくらいに出っ張っていることを強調したものだ。

 18世紀に遡れば、黒人の身体的な特異性に畏怖と好奇心をもった西洋人が黒人女性の裸を見世物小屋のような感覚で“展示”した暗い歴史もある。

 その歴史を踏まえたうえで、“黒人女性の豊満なお尻に憧れて整形しているのでは”と指摘されることもあるキムが、「シャンパン・インシデント」を2014年にファッショ誌で“再現”したことに、複雑な思いを持つ人がいてもおかしくない。

 その再現が、暗い歴史の証ではなく、新たな時代の象徴であることを願いたい。
(文=ツジエダサト)

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