囁き声や本のページをめくる音など、特定のフェティッシュの音を聴いた時に、頭の後ろから背中までゾクゾクするような快感に襲われたことはないだろうか。
それは、“脳のオーガズム”とも呼ばれる、「ASMR(Autonomous Sensory Meridian Responseの略)」によるものだと言われている。意訳すると、“自立神経に作用して起こる快感反応”。誰にでも一様に起こるものではなく、科学的に証明された現象ではないものの、イエール大学の神経学者であるスティーブン・ノベラなどの一部の学者は、特定の認知的な刺激に対し起こる不随意反応(無意識の反応)であると推測している。刺激によって脳内の電気活動にある種の発作が生じ、それを快感と感じる、ということらしい。
さて、今、この脳のオーガズムのための動画がYouTubeなどの動画共有サイトで急増し、海外では数万人規模のコミュニティサイトまで登場している、と雑誌『ニューヨーク・マガジン』が運営するウェブサイト「ザ・カット」が報じている。
オーガズムを感じる音は人それぞれ。紙の上を滑るえんぴつの音にゾクゾクする人もいれば、髪の毛を切る音にゾクッと鳥肌を立てる人もいる。ASMR動画の視聴者の中には不眠症やPTSDなどの心的な問題を抱えている人も多く、彼らは自分に合った薬を探すように自分に合った音を探し、その音を睡眠誘導剤代わりにしているようだ。
鎮静や癒し効果があると言われるASMR動画だが、しかし一方で、性的な興奮を覚える者もいる。そのことを証明するかのように、YouTubeにおいて300万件以上あるASMR動画の中でもダントツの人気を誇るのは、女性の囁き声だ。