さらに別の関係者によれば、「たとえば関係者2人にそれぞれ日を置いてインタビューしたものの、後にインタビューした人がオンエアでは先に聞いたことになっている」いわゆる“テレコ”編集などは、もはや当たり前のように行われているという。
「思えば、川口浩探検隊シリーズをはじめとする『水曜スペシャル』(テレビ朝日系)などが放送されていた1970~1980年代は、テレビがまだ特別な存在で、何をやっても咎められない自由な雰囲気がありました。しかしYoutubeやニコニコ動画などがこれだけ身近になると、映像といっても特別なものではないですからね。テレビ番組が世間一般のモラルに抵触すれば、ただちに『アウト』となってしまうのではないでしょうか」(前同)
時代の空気のせいにするのはお門違いだが、テレビ番組のメディア倫理が今ほど問題視されなかったことは確か。ちなみに、最近のコマーシャルでよく見かける「CM上の演出です」とのコメントも、そうしたモラルを気にする善良な市民のクレームを避けるための自己防衛だと聞く。
いまだに「演出」「捏造」「ヤラセ」といった、番組を作る上では避けて通れないボーターライン上の問題が根強いテレビ業界。視聴者からのクレームに敏感になりすぎた今のテレビは、「真実を伝える」という本来の性格に固執しすぎて、「虚構性」や「怪しいもの」といったものを失いつつあるのかもしれない。
(文=今井良介)