ちなみに、明治から大正にかけて、ダイナマイトを使った事件や事故が頻繁に起きていた。この事件のように殺人に使用されるケースのほか、自殺や心中に使われることも少なくなかった。たとえば、ダイナマイトを懐に入れ、抱き合ったまま点火して心中を図った男女カップルの例もあった。挙げ句は、大正9年6月には兵庫県神戸市で、50本入りダイナマイト5箱が「落し物です」と届けられる事件まで起きている。
当時、軍隊の火薬庫は警備が厳重だったものの、鉱山などで使用される火薬や爆薬は管理が甘く、盗まれたり、あるいは関係者によって転売されたりするケースが多かったらしい。何とも物騒な時代だったものである。
(文=橋本玉泉)