世界的巨匠でもある宮崎駿(73)を直接的に攻撃した江川の言葉は、さっそくネットニュースなどで報じられた。しかしネット上にはそもそもアンチ江川の存在も大きく、彼の言葉に賛同するものもいれば、ここぞとばかりに江川を叩くコメントも多く見られる。しかしもっとも声が大きかったのは、オタクという存在に偏見を持っているかのような番組作りへのネットユーザーたちの不満の声だった。
番組には規制推進派として自民党議員やマナー講師、犯罪心理学の専門家などが出演していたが、江川たち規制反対派の、“アニメと犯罪の相関関係は証明されていない。もし関係があったとしても、それは犯罪者のような特殊な人間に限られる”や、“日本よりも厳しい規制を行っている欧米のほうが対児童犯罪は圧倒的に多い”、“アニメが抑止力になっている面もある”という主張を覆すことはできなかった。
江川らのこうした主張は、現実を踏まえた客観的な意見で、代議士なども反論はできず。事実としてアニメオタクが女児に対して犯した犯罪を例に挙げていたが、やはりそれは極々まれな事案であり、それだけに焦点を当て規制を強めるのは乱暴だろう。また、番組ではオタクに密着したVTRが流されたが、2次元のキャラクターと共にファミレスで誕生日会を行っているような様子はかなり特殊なもので、偏ったオタク観によるものだった。ネット上でもそんな番組作りに対するバッシングが渦巻いている。
確かに江川の宮崎アニメに対する発言は過激なものだが、現在のオタクという存在は、番組スタッフが考えるよりもかなり日常的なもの。番組の中ではアニメ規制推進派の出演者たちが、まるでアニメオタクたちは就職もせず、恋もしないと決め付けているかのような発言を繰り返していたが、今のオタクというのは普通に就職し、恋をする“普通の人々”で形成されていたりもする。偏った見方をしているのは、よほど推進派の人間であることが露呈した内容だった。番組の終わりには、司会のビートたけしが、アニメの規制問題について、「偏らなければいい」とまとめていたが、番組自体が偏った作りになるという皮肉な結果になってしまった。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/)
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