している。様々なテクとずば抜けた妄想力が、美しい女性達をとことんまで
汚す! 今まで苦しい思いをしてきた竹下の、復讐劇の始まり……か?
『夢ミル醜人 第一巻』著:ぐすたふ/日本文芸社
これが18禁じゃなくて……本当にいいの? そんじょそこらのエロマンガよりよっぽどエロくてヤバいよ!?
フルカラーなのに値段が648円という破格のこのマンガ。作品のタイトルを見てゾクっときた人、正解。とんでもなくドス黒い内容なので、エロ方面はもちろんのこと、シチュエーションの過激さも18禁じゃないのが驚きです。確かに性器描写はがっちり消しが入ってますが、シチュエーションがヤバすぎるよー。
先に言うと、この作品の中で実際にセックスをしているシーン、ありません。「醜人」と称された主人公の竹下浩二が、盗撮をしながら妄想をふくらませてオナニーをする。その妄想シーンを丹念に描いたというドロッドロの作品なんです。
竹下の容姿は、極めて醜いです。まあ人を顔で判断するのは……というのは全くもってその通りなんですが、顔というより人間性がもう醜さの塊みたいなキャラなんです。女性は皆劣った性処理的存在としか考えていない。他の男は腰を振るだけの低能だと思っている。
というのも本人が非常に学力優秀で、教授顔負けの研究結果を出す才能の持ち主。そのため、フラフラ遊んでいる人間に対して強い嫌悪感を持っているからです。でもそれだけだったらまだイライラする程度で済んだでしょう。しかし、彼のコミュニケーションが取れない性格と容姿の醜さが手伝って、不遇な日々を過ごしてきたとなると話しは別。しかも身近には、特に頭がいいわけでもないけどイケメンさと明るさでリア充生活を送っていた斉藤という男の存在があり、妬みが積りまくり。鬱屈がパンパンに膨れ上がります。
そして自分に優しくしてくれていた片想いの女性・香奈子が、その斉藤と結婚することで彼の中の心のダムは決壊。竹下の暴走が始まります。
竹下は、基本的に盗撮マニアなんですが、その盗撮の手口とスムーズさはちょっとすごいです。自分の守備範囲にあたる研究室などはもちろん、基本的に女性が出入りする場所には盗撮カメラを常備。例えばトイレ一つをとっても個室をマルチアングルで盗撮する、というかなり高度なことをしています。電車でのローアングル盗撮カメラの設置や、メイド喫茶での赤外線カメラでの撮影などは、まあよくも思いつくなというレベル。やっぱりある意味、彼は知力に長けているんです。
この巻では彼がドス黒い性欲を抱えながら、盗撮や視姦をするだけでおさまっています。女性を見るたびに、妄想の中であれやこれやという手段で犯しまくるのです。妄想なので、かなりファンタジー的な犯し方もします(電動ジグゾーのディルドとか)。でもファンタジー的なものよりも生々しいリアルな妄想の方がゾクっとしますよ、ありそうなんだもの。やりそうなんだもの。
極端に濃い妄想を振りまく竹下の姿は、とてもじゃないですがご飯を食べながら見られないくらいに醜悪です。それで果たしてエロマンガとしてエロいのか?と言われたら……これがエロいんだなー。
エロマンガのテクニックの一つに、男性側を極度に醜悪に描くことで、女性側を綺麗に見せるというものがあります。竹下は見た目も心も思いっきりドロドロしていますので、比較されることで出てくる女の子たちみんなめちゃくちゃに可愛く見えるんですよ。
特に学園のアイドルとも言える来栖恵美のかわいらしさは、まったくもって輝いています。キラッキラです! 当然彼女も竹下の妄想の餌食になるわけですが、男女の対比がうまいので怯える彼女のキュートさに拍車がかかります。
加えて面白い設定もあります。竹下は大学で博士三年目であると同時に、超有名イラストレーターなんです。つまり妄想したことを絵にできる技量も持ち合わせている。気に入った女性を究極まで美しくエロく妄想し、形にできるんです。
そう、出てくる女性がどこまでも美しいから妄想はタイトルのとおり「夢」になるはず、でした。
人間はそうそう綺麗じゃありません。竹下は汚れの極みではありますが、実はまだ現時点では実際に女性に手を下していない。盗撮しているのでセーフとは言いませんけれどもね。中盤までは竹下が最も醜悪な人間のように見えます。
ところが既婚のはずのイケメン斉藤が、実は歪んだ性癖の持ち主だったり、実際にパワハラ・セクハラを繰り返す教授の後藤が出てきたりと、どうも竹下以上に歪んだ人間がボロボロ出てくる。極めつけは美しくかわいい学園のクイーン来栖恵美の、本当の顔……。あらゆる人間の、ある意味では竹下以上に醜悪な部分がむき出しにされた状態で次巻に続きます。
それでも竹下の行動はやはり醜い。恐らく嫌悪感を持つ人が多数だと思いますが、彼がひたすら妄想を繰り返す様を見ていて嫌な気分になるのが自分に跳ね返ってくるから困りもの。ああそうか、自分も妄想している時ってこんななのか?
実際のセックスシーンはなしですが、現実と竹下の妄想の切り替えが非常に面白い作品。キリキリと迫る人間関係描写が多く、中途半端に寸止めされているので、今後どうなるのかが気になって仕方ない。これから復讐劇がはじまるのか? それとも妄想のままで済ませるのか!?
(文=たまごまご/たまごまごごはん)