どすこい! イかせたもん勝ちのレズモウマンガ! 上連雀三平『やまとなでシコ』

たぶん世界で唯一の、どすこい熱血レズモウ青春マンガ『やまとなでシコ』がついに単行本化!
愛と友情とおしっこの染み渡る土俵をしかと見よ!

上連雀三平著『やまとなでシコ』

 レズモウ! それは女のみが許されるスポーツ。基本ルールは体の一部が土俵につくか、外に出たら負け、と相撲と全く同じだが、レズモウは体へのあらゆる部位へのタッチが許されており、イかせて倒す特別なスポーツなのだ!

 こんなアホなスポーツマンガを誰が考えたんだ……と思ったら、おちんちん物に定評のある上連雀三平氏でした。だったら仕方ない。ちなみに「レズモウ」ですから、おちんちんもふたなりもありません。あくまでも女の子同士。

 詳しいエロマンガファンならかなり驚いたかもしれません。というのも今作が連載されていたのは、2005年のワニマガジンの「快楽天」。それが今になってまさかの単行本化、しかも茜新社から。エロマンガで掲載誌と単行本化が別の出版社というのはかなり多いことなんですが、まさに「今になってなぜ!?」という気持ちになります。しかし、それでも面白さは全く変わらないので無問題。

 どんな話なのかを説明するのも難しい、とにかく女の子たちがレズモウ部に集まってレズモウをする話です。女の子がまわし巻いて、お互い土俵の上でイっているだけで頭の中真っ白になっちまいますね。その延長で、土俵の外でも淫乱にまぐわい合う日々を送り、ひとしきり稽古が終わった後には制服で優雅にお茶する様子がさらっと描かれていて、極めてシュール。おおかた予想がつくと思いますが、某お姉さまの集う小説へのオマージュをも含んだ作品です。読んでいるうちに「あれ、常識ってなんだっけ?」と分からなくなります。

 ところが、ただのギャグじゃないんです。彼女たちは真剣にレズモウに青春を懸けており、行動原理は熱血に基づいています。彼女たちはなぜレズモウをやるのか? やっていることはトンチンカンに見えるかもしれない、というかありえない世界。しかし、読み終わった後になぜなのかこの狂った世界に幸福を感じるのです。これが上連雀三平氏の作品のマジックです。

 性のイマジネーションは限りなく無限大。マンガの上であれば何をやっても構いません。その世界で「これが正しいのだ!」と言い切れば、それは正しいのです。ちょっと脳みそのスイッチを切り替えるだけで、こんなにも熱く楽しくエロく楽しめる。上連雀作品はそれを雄弁に語ります。数年前の作品ですが、このエロさと独創性は他の作品に全くひけをとりません。

 おしっこシーンと女×女のシーンが多いので、そちらの嗜好の人であれば笑いつつも大満足できること間違いなし。正攻法のセックスが見たい人向けではありませんが、熱血と恋愛要素は楽しめるはずです。

 それにしても、読み始めたときは「訳が分からないよ(笑)」となっていたのに、読み終わった後で妙にトリップしたような感じになるのは本当に不思議。この作品が埋もれたまま行方知れずにならなくて本当に良かったです。作中キャラがほぼすべて、声優の名前から取られているのでこちらもチェックしてみると面白いですよ。

(文=たまごまご/たまごまごごはん

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