椿十四郎氏を知っている方ならタイトルを見た時点で「予想通り」とニヤリとしたはずでしょう。実はこの作家、近親相姦ものしか描いていないというすごいエロ漫画家さんなのです。極端な話、どんなアニメやマンガを見ても「これは仮に姉だとしたら・妹だとしたら」という想像に置き換えて妄想が出来る近親相姦妄想のプロです。
近親モノってどうしても抵抗がある人多いと思います。特に実際に姉や妹がいると「ないない」となるでしょう。しかしマンガってのはすごい、逆に近親であることが興奮のファクターになりえます。この作家はそれを計算しつくして、興奮の材料に変えています。タイトルがズルイですよ、某ラノベのようでいて全然違うというね。しかも「でしょ?」って訊かれたら「はい」って答えざるを得ないじゃないですか。
マンガだと姉や妹も単なる属性の一つに変換されるため、非常にかわいらしく描くことが出来ます。しかし逆なのです。この作品集「かわいい、けど妹・姉」なんです。キャラ本人たちも「それはまずいよ」「それは超えちゃ駄目だろう」とストッパーがかかります。特に近親ものが好きな人は「実姉妹か、義理姉妹か」で主張が異なることがありますが、この作品集は「実姉妹」。つまりより一層「それはやったらだめだろう」という歯止めがきついです。
きついですよね? きついよね?……ほら、そこを乗り越えるんですよ、この背徳感! これぞ近親フィクションの醍醐味です。つまり「普通はやらない性のファンタジー」なんです。実際に姉・妹がいる人でも、それと切り離して「うわあ乗り越えちゃったエロい!」と興奮できるだけのテクニックをこの作家は持っています。
近親モノってその後猛烈に罪悪感に責め苛まれたり、苦しんだりするものも面白いんですが、この作家が描くマンガはすっごいあっけらかんとしています。乗り越えたんだから歯止めがきかないでしょ? とカラッと笑い飛ばしている、これは非常に心地いい。ある意味日本の昔の艶笑譚ような、軽快な明るさすら感じます。背徳感があってドキドキして、でも「わー楽しいー!」なんです。
個人的にオススメしたいのは一つ目の兄と妹が歯止めが効かなくなってラブホに通いつめちゃう「スキだからおk!」と、二つ目のそばかすで微妙に美人度が低くてむっちりした姉が生々しくていやらしい「汚してあげる」。特に二つ目は姉描写がものすごく「姉」なんですよ。言葉で言い表せないですね、絵を見たら一発で言いたいことが分かってもらえると思います。「うわこれ姉ちゃんだ!」という家族特有の汗臭さすら感じる距離感が素晴らしい。姉弟、身体の快楽をお互い堪能する関係なのに、「可愛いとかキモイこと言うな」と姉が心の部分を拒絶するのもいいんだなあ。姉のなんたるかをよく計算し、完成されていると思います。
近親モノはちょっと……という方にこそオススメしたい、読後爽やかすっきりなエロマンガです。ファンタジーなんだもの、飛び越えた世界を楽しみましょう。個人的にはこの前の作品集「姉妹みっくす」の方も、妹ものが多いのでオススメ!
(文=たまごまご/たまごまごごはん)