番組の予告動画では、怒る吉木が最後に、「お前が好きなんだよ!」と叫ぶというオチが用意されていたが、初回の本放送でも同じような結末があり、ネットユーザーたちの中には、「最後まで怒ってほしい」「媚び売らなくていい」などといった声も見られた。番組サイドとしては、胸キュン狙いのオチで、「ツンデラ」ならぬ、怒りながら照れる「いかテレ」を狙ったのかもしれないが、一般の視聴者にはウケても、純粋に怒られたい願望の強いネットユーザーにとっては、物足りないラストになってしまったのかもしれない。
いくらネットユーザーを意識した番組といっても、実際に放送されているのは地上波のテレビ放送なわけで、そこに生じる溝をきっちりと埋めるのは難しい。しかし番組の放送枠は7分間で、実質でいえば5分弱の中身だった『吉木りさに怒られたい』。番組の最後に企業広告が差し込まれているところなどを踏まえると、その構造はネット動画そのものといった印象。加えて、放送終了後には姉妹番組がテレ東動画で配信されており、まるで今回のテレビ放送がインターネット版の宣伝だったかの印象すらある。
ネット上からネタを集めるのは、もはやテレビや雑誌などのメディアにおいて当たり前の時代だが、今回の番組は、それ以上に、ネットそのものを意識した内容だったといえる。しかしターゲットであったはずのネットユーザーたちの中には、まだまだ物足りないといった声も多い。『吉木りさに怒られたい』は、すでに全放送分の収録を終えているというから、コアなネットユーザーたちの声を参考にした方向性の転換は難しいだろうが、ネットを意識した番組作りを得意としているテレビ東京が、今後のバラエティで、さらにネット的になるのかどうか注目していきたい。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/)
著書『松本人志は夏目漱石である!』(宝島社新書)