警察官が植木の書き込みをチェックしていたのか、気付いたファンが警察に連絡したのかは不明だが、たまたま目にした「応援したくなる花」が違法種だったという奇跡的なめぐり合わせと植木の天然ぶりが炸裂したエピソードといえるだろう。彼女にとってみれば日常のささやかな感動をファンと分かち合おうとしただけなのに、とんだ災難となってしまったようだ。
欧州・アフリカが原産のアツミゲシは、60年代に日本で自生しているのが初めて発見され、当局が駆除を繰り返しているものの、雑草レベルの強い繁殖力が災いして現在に至るまで根絶できず、それどころか街なかの駐車場や空き地、道路の中央分離帯などでも見つかるほど全国各地に定着している。アツミゲシの実を食べた渡り鳥の糞を通じて種子がバラ撒かれたり、海外製の肥料に種子が混入しているケースなど、どれだけ駆除しても侵入ルートがいくらでもあるためだ。
アツミゲシは他のケシと同様、モルヒネやアヘンの原料になる。そのため法律で栽培が禁止されているのだが、アヘン成分を含んだ「ケシ坊主」が非常に小さく、他のケシと比べて成分抽出が非常に非効率的。海外ではほとんど規制すらされておらず、アツミゲシから麻薬を作ったという事例も報告されていない。
いわば麻薬の製造に使われる可能性はほとんどないのだが、日本の法律では禁止されてしまっているため、警察も見過ごすことができなかったのだろう。
似たような騒動としては、元プロ野球選手でタレントの板東英二の「ケシ栽培疑惑」がある。現役時代、板東が娘とともに自宅の庭先でくつろいでいる写真がスポーツ紙に掲載された。程なく、複数の警察官が板東の自宅を訪問。板東の自宅の庭にケシが自生しており、それが写真にバッチリ写ってしまっていたからだ。板東はケシと知らずに育てていたといい、警察がケシの花を抜いていっただけで事なきを得たという。
これらの例に限らず、一般でも園芸店が間違って販売してしまったり、自宅や山に自生したケシや大麻草を知らずに育てていたために警察沙汰に発展するケース等が多々ある。違法と知って栽培するのは論外だが、全く意識していない人でも巻き込まれてしまう可能性があるだけに注意が必要だ。
(文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops)