しかし、そんな空気を察知したダウンタウンの松本は、すかさず「とんねるずが来るとネットが荒れるから」と発言。スタジオは笑いに包まれたが、そんな松本の言葉に敏感に反応したのが、ほかでもないとんねるず。そのとき舞台の上には、さんま、タモリ、ダウンタウン、ウンナン。これだけでも豪華すぎる出演者がいる中に、「なげーよ」と言いながら登場したのが石橋だった。そしてゆっくりとした足取りでやって来る木梨。思わずスタジオの芸能人たちも「おお~」と興奮するほど、突如夢の共演が果たされたのだった。
身内といえるスタジオの有名芸能人たちも素直に驚くダウンタウンととんねるずの共演。視聴者の驚きと興奮は想像に難くない。そして次にやって来たのが爆笑問題。こちらもダウンタウンとの不仲説があり、まさに奇跡の共演が果たされた瞬間であった。もちろん彼らの共演はネット上でもすぐに話題になり、ネットニュースでは速報が出て、2ちゃんねるにはいくつものスレッドが乱立するお祭り騒ぎとなった。特に、「ネットが荒れるから!」と連呼する松本に対して、石橋が「松本がネットで荒れるって言うから!」と声を上げると、身震いするような感動が多くの視聴者にも沸き起こったことだろう。
話の内容もほとんどなく、いつまでもグダグダな時間が続いたが、いつまでも見ていたいと思わせる力を持っていた夢の共演。そしてそれが終わるとSMAPによる「ありがとう」の熱唱とレギュラー陣による感謝のスピーチ。ただ延々とタレントが言葉を紡ぐだけだが、これもまた感動的なシーンの連続だった。特に、涙に暮れるのかと思われたスピーチが続いた中で、バナナマンの日村は、いち早く空気を一変させることに成功し、まざまざとその芸人魂を見せつけた。やはり『笑っていいとも!』という番組には笑い声がしっくりくる。そしてそれが芸人たちによるタモリへの最大の感謝の印なのだろう。
間違いなくテレビバラエティ史の一大事件として記憶される『いいとも』のグランドフィナーレ。そしてそれはバラエティ界の大きな区切りとなるに違いない。とんねるずやダウンタウンが同じステージに立つ中で、唯一人その場を仕切っていたSMAPの中居が、タモリへのスピーチの中で「バラエティは残酷」と言っていたが、盛大な宴の後には再びバラエティ界の熾烈な争いが待っている。奇しくも今回の放送では、それぞれの芸人たちの実力が如実に現れてもいた。そしてそれは、(世代に関係なく)新しい時代の幕開けを予感させるものだった。
数多の芸能人をスタジオに集め、熱気溢れる空間を生み出したタモリ。その熱気は低迷が続くバラエティの起爆剤となりうるほどの感動を視聴者に届けた。最後にタモリは、「明日も見てくれるかな?」といつもと同じフレーズで番組を終わらせたが、それは、これまでタモリが歩んできたバラエティ番組全体のことなのかもしれない。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/)
著書『松本人志は夏目漱石である!』(宝島社新書)