【短期集中コラム】

AVメーカーの本当の仕事 AVができるまでの過程とは?

AV業界への就職を考える人へ! これがAV会社の実態だ!! 第二回「AVメーカーの本当の仕事 ~前編~」

※イメージ画像:Thinkstockより

 私はかつて某大手AV制作会社に勤めていたことがある。およそ2年という短い期間だったが、多くの出会いに恵まれて、業界の酸いも甘いも吸わせてもらった。その会社は業界で1、2を争うリーディングカンパニーだったこともあり、業界全体の構造もかなり勉強できた。そこには、おそらく一般の方が抱いているAVというイメージとは、ほど遠いであろう現実がある。もし、アダルト業界に興味があるのなら、この短期集中コラムをご一読いただきたい。もちろん私の経験に基づく意見なので、これから述べることがすべてではない。しかし、少しでも現実を知りたいという方にとっては有益な情報もあると思う。

 唐突にはじまった本コラムだが、その必要性に疑問を抱いている方も多いだろう。なぜ今、AV業界について語っているのかと滑稽に思われるかもしれない。ネットが発達した今、AVというパッケージ商品は少なからず衰退期を迎えている。動画サイトを観れば、誰でも無修正の動画が見られる時代だから、当然といえば当然だ。

 しかし、よく考えてもみてほしい。アダルト系動画サイトに、素人投稿のセックスビデオと流用された市販AVの比率は、いかほどであろうか。おそらくその9割は、制作会社によって撮影されたAV作品のはずだ。

 つまり、ネットで無料動画にありつけるのも、日本に無数のAV制作会社が存在しているからにほかならないのである。決して大げさではなく、AV制作会社がなくなれば、オナニーのオカズにさえありつけなくなるだろう。常にユーザーの多様な性癖に応えてきた彼らに、筆者は尊敬の念すら抱く。そんな業界を少しでも知ってもらいたいと考え、今回の集中コラムを執筆することとなった。

 そろそろ本題に移ろう。第二回のテーマはAV制作会社。読者の皆様には「メーカー」と言ったほうが、わかりやすいかもしれない。制作会社のほとんどがメーカーを名乗っているからだ。蛇足だが、「レーベル」はあるメーカーのなかでの、別ラインナップを指すので、メーカーとレーベルは区別されたほうがいいだろう。

AVができるまでの過程とは?

 さて、巨大な流通会社(第一回参照)に対して、より男の欲望と真摯に向き合っているのがメーカーだ。彼らのもっとも大きな仕事は、言わずもがな「撮影」である。しかし単に撮影といっても、ただセックスを撮っているわけではない。入念な下準備をしたうえで行われているのだ。さらに、商品として発売されるまでは、長い工程を踏まなくてはならない。そこで今回は、AVができるまでの過程を追ってみよう。

1.女優との面接

 主に撮影を担当する監督やプロデューサーと女優、マネージャーが面談する。何をどこまでできるかの意思確認と撮影するタイトルの企画説明が目的ではあるが、そのスタイルはメーカーや企画によってさまざまだ。たとえば、潮吹き企画だった場合、面接時に「どのくらい潮を吹けるか」をバイブなどを実際に使用して試すこともある。アナルを売りにするメーカーだったりすると、どのくらいの太さまで入るのかを実証したりもする。そのため、AV作品の質は面接ですべてが決まるという監督も多い。

2.ロケハン

 企画意図に沿ったスタジオやロケーションを選定する。何度も使用しているスタジオの場合、わざわざ出向くことはほとんどない。しかし、野外露出がテーマだったりすると話は別だ。ゲリラ的に行っていると思われるかもしれないが、ほとんどが入念な下調べのもとで撮影は行われる。人通りが多い現在は規制が厳しくなっているため、野外露出モノは少なくなってきてはいるが、ギリギリのラインで撮影を敢行するメーカーも実在する。

3.大道具、小道具、衣装の準備

新米ADの主な仕事がコレ。簡単な仕事だろうとナメてはいけない。規模の大きなメーカーでは膨大な衣装や小道具が倉庫に保管されていることが多い。道具部屋だけのためにマンションの一室を借りていることもあるほどだ。その膨大な備品のなかから企画意図に沿ったものを選ぶのだから、相当の時間と労力が必要とされる。撮影前日ともなると一昼夜かけて行われることもある。また、痴漢モノでよく登場する電車やバスはレンタルしている。業者の場合もあるが、個人所有のモノを借りることもある。

4.撮影

上記のような入念な下準備のもと、撮影当日を迎える。新米ADなどは寝てない場合がほとんど。しかも、メイクやカメラ、照明などはフリーランスの専門家を呼ぶことが多いため、ADは備品や進行管理に追われながらも、彼らの昼食やツナギ(業界用語で、撮影の合間に食べる軽食やスナック、飲料を指す)の調達までしなくてはならない。女優と会話をするのは、主に監督の務め。決してADを虐げているわけではなく、企画意図の共有を現場で確認しているのだ。一部には役得だと思っているスケベな監督もいなくもないが。

5.映像編集

 アダルトのみならず映像作品すべてにおいて、重要とされる作業。1日の撮影で8時間ほど回したテープをつなぎ合わせて2時間ほどにする。納期が短いと徹夜つづきになることもある。そのため、編集マンはどこかくたびれている印象がある。監督によってずっと付き添って指示する場合とそうでない場合がある。夜を徹して監督のプレッシャーに耐えるか、あとで監督から再編集を依頼されるか。いずれにしても神経をすり減らす作業である。

6.モザイク修正

 モザイクをかけるのは、専門の映像編集会社がほとんどで、自社で行うケースは少ない。多くはアルバイトが行い、ひたすらチ○コとマ○コを追いつづける。熟練アルバイトになると、「モザイク職人」と呼ばれるようになり、周囲から崇められる。単純作業が得意でない人はノイローゼ気味になることも。

7.モザイク審査

 審査団体に所属している場合は、モザイクにモレがあるかないかをチェックしてもらう必要がある。有名な団体に「ビジュアルソフト・コンテンツ産業共同組合(VSIC)」や「コンテンツソフト共同組合(CSA)」などがある。モザイクだけでなく、過剰な演出などによる倫理面のチェックも行う。某痴漢メーカーは、審査団体と大ゲンカをして脱退騒動を起こしたこともある。

8.パッケージデザイン

 商品の顔ともいえるパッケージデザイン。専門のデザイナーに依頼することがほとんどだが、最近では自社でデザイナーを抱える会社も多い。担当するのは主にプロデューサーか監督。売れるか売れないかを左右する重要な作業なので、必然的に修正も多い。筆者が知っているかぎりでは、最高で20回弱の修正を加えたケースもある。我の強いデザイナーだと口論に発展することもしばしば。

 その後、工場でのプレス作業などを経て、ようやく1本の作品が出来上がる。ご覧いただいてわかるように、意外とさまざまな工程を経てAVは制作されているのだ。外部に発注するにせよ、すべての進行管理をメーカーで取り仕切るため、実際には撮影以外の雑務が8割を超えるといっても過言ではない。過酷な労働条件になるのも当然である。

 こうした作業を毎月のようにこなしているのだから、前述したように尊敬の念を抱かずにはいられないのだ。しかも、世間からの差別の目とも闘いながら、である。正真正銘のクリエイターとはいえないだろうか。

 第二回はAVメーカーの全体的な仕事を述べてきたが、次回は皆様がもっとも気になるであろう撮影現場にスポットを当てて論じていこうと思う。
次回へつづく
(文=中河原みゆき)

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