「もう最近、会う人会う人から平手打ちをしてくれって頼まれて困るのよ」
これは、デヴィ夫人が先日行われた映画の公開記念イベントで語った言葉である。この発言の発端となったのは、先月15日に放送されたスペシャル番組『奥様はモンスター2』(TBS系)での1コマだ。エキストラの女性がデヴィ夫人に暴言を吐き、挑発が過ぎたため、それに怒った夫人が平手打ちを3発食らわせることに…。エキストラの女性は被害届を出したものの、その後取り下げるなど、事態は収束していった。
この悲劇の原因は、デヴィ夫人の性格を理解していなかったことにあるのではないだろうか。テリー伊藤は「制作サイドのデヴィ夫人に対する認識が不足している」という旨の発言していたが、まさに、その「ズレ」がこの騒動を生んでしまったともいえる。ある番組でデヴィ夫人をパネラーとして呼んだことのあるテレビ関係者は語る。
「デヴィ夫人は、こちら側の意図していないことを発言したり、行動を起こすからおもしろい。だから今回の制作スタッフも、夫人の怒りが平手打ちになったことは予想外だったとしても、それに近い行為に発展することを最初から見越していた可能性も捨てきれません」
規制が厳しくなりつつあるテレビ界にもかかわらず、ある種、しがらみを超越したようなポジションに位置するデヴィ夫人。そういった夫人のキャラクターを考えると、親しかった故・淡路恵子さんの葬儀で「形身として着物を譲ってくれ」と親族に持ちかけた一件も、自身のメルマガで東京都知事候補だった田母神俊雄氏への投票を呼びかけ、警視庁から「公職選挙法違反の疑い」として警告を受けたことも、まさに夫人ならではのエピソードといえるだろう。
ただ、そういった行動が続くことに対し、一般人からの非難の目はさらに厳しいものになっている。着物騒動の件は「節操なさすぎる」「知人の分際で形見をよこせとはあつかましい」という声が上がり、公職選挙法については「抵触するのなぜ厳しく追及しない?」「自分は外国人だから知らなかったって言ってるけど、そんなの言い訳にならない」など、彼女へのバッシングは止まらない。
それでも、「デヴィ夫人は今後もテレビ界で重宝される」と先の関係者は語る。「常に体当たりで何事にも挑戦してくれるからありがたいし、やっぱり想像もつかないことを起こしてくれますからね」ということのようだ。
しかし、体を張ったロケに対する「安全性」への認識の高まりや、テレビメディアの「モラルや倫理」が問われている中、ただデヴィ夫人を出して笑いを取っているだけでは、視聴者からテレビそのものが見捨てられてしまうだろう。
いずれにせよ、今のネット社会においては番組収録中の騒動もプライベートな出来事もすべてが白日の下にさらされてしまう。そんな中、そこに「打算」や「計算」があろうとなかろうと、自分に素直で堂々と生きるデヴィ夫人のようなタレントの一挙手一投足は、これからも賛否両論ありながらおおいに世間を賑わせてくれるだろう。
(文=今井良介)