「少女と老人」「3人連れ立って」明治・大正の心中珍事件

※画像:『東京朝日新聞』大正2年3月16日より

 
 また、やはり『東京日日新聞』明治6年7月8日号の「三人心中」というタイトルの記事では、川崎の渡し場で3人の女性が身投げした事件に触れている。事件が起きたのは早朝午前5時ころで、周囲のいた人々の救援によって3人は岸に助け上げられた。3人はそれぞれ19歳、24歳、28歳の女性で、1本の縄で身体をつないでいた。そして、19歳の女性は妊娠しており、28歳の女性は結婚して夫がいる身だった。人々の懸命の介抱によって19歳と24歳の女性は一命を取りとめたが、28歳女性は死亡した。

 男女関係のもつれなのか、あるいは3人の女性の間で何かの感情があったのか。記事では詳細には触れていない。

 この時代の心中で目立つのは、10代から20代の若い男女の事例である。親の無理解という理由が多いようだが、明治41年9月の『東京朝日新聞』の記事では埼玉県で起きた17歳の少年と14歳少女のケースが紹介されているが、短刀で少女の喉を突き刺して死亡させた後、自分も同様に喉を突いたものの急所を外したらしく致命傷には至らず、悶絶しているところを住民に発見されて病院に搬送され一命を取りとめたという。こうし一方が生き残るケースも多くみられる。これはこれで悲劇である。

 さらに、心中なのか事故死なのか判断にとまどう事件もみかけることがある。明治45年7月9日のこと、東京で川岸に2人の遺体が浮いているのが発見されたが、引き上げてみると60歳くらいの男性と16最程度の少女であり、双方の胴体を抱き合うように帯でくくりつけられていた。素性詳細は不明だが、こうした不可解な事件は戦前の新聞には数多く掲載されている。
(文=橋本玉泉)

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