音楽評論家による“ヲタ視点”からの「2014年アイドル業界への5つの提言」


3.ファンコミュニティに目配せをしろ

 2013年12月29日に「第2回アイドル楽曲大賞2013」(http://www.esrp2.jp/ima/2013/)というイベントが阿佐ヶ谷ロフトAで開催された。これはメジャー、インディーズを問わずに幅広いアイドルを対象にして楽曲やアルバム、推しの投票を行ったイベントだ。

 その発表がされた後、それに反応するアイドルの公式Twitterカウアントが多かった。さらに、アイドルのアイテムの豊富さで知られるタワーレコード新宿店がコーナー展開をしていたことも特筆したい。運営とファンの感覚の乖離はどうしても発生してしまう事態だが、ファンの自発的な投票行動に運営が敏感に反応することは、ファンコミュニティを活発化させ、運営の好感度を上げることにもつながるだろう。

 実は、私が選出した「『次の10年』を生き抜こう。~2013年アイドルポップスベスト10まとめ」(https://www.menscyzo.com/2013/12/post_7015.html)も、多くのアイドルの公式Twitterアカウントに反応していただいたり、タワーレコード新宿店でコーナー展開をしていただいたりした。誌上を借りて深く感謝したい。

 Twitterなどのソーシャルメディアは、特にアイドル本人とヲタの関係において使い方が難しい面がある。私のようなレス厨の問題もあるが、アイドルとヲタがつながってしまう問題は特に根深い。それゆえに、メンバーよりも運営による公式Twitterアカウントを中心にして、ソーシャルメディアを活発に利用したほうが良いだろう。体感的には、セールスが万単位の規模になるまでは特に活用したほうが良いと見受けられる。

 
4.長時間に多数のアイドルが出演するイベントについてちょっと考えろ

 アイヲタをやっていてキツいのがこれだ。多い場合は10組以上のアイドルが出演し、前売りでも4000円~4500円程度のチケット代がかかるようなイベントである。1組の持ち時間は30分にも満たないことも多い。

 こうしたイベントは以前よりも確実に増えている気がする。さらにタイムテーブルをなかなか出さないイベントともなると、スケジュール調整にも困るし、そういうイベントに限って物販が混乱してアイドルと接触する時間が削られてしまう。アイドルの運営にはキックバックがあるのだろうが、お目当てのアイドルにしか興味がないヲタの場合は、心身、そして金銭面で疲弊するだけだ。とはいえ、アイドルの側も特に活動開始当初は出演するイベントなど新規ファン獲得のためには選んでいられないだろうし、難しい部分だ。

 こうした問題の解決策として、定期的に自主企画を開催して方向性が近いアイドルを呼んだり、ツーマンライヴを開催したりして、ガス抜きを図るという手がある。

 また、無銭イベントも新規ファン獲得には重要。それと同じぐらい、料金が高くても固定ファンのために選民イベントを開催して高い満足度を与えることも必要だ。「飴と鞭」とはよく言ったもので、飴がないことにはヲタもモチベーションを維持できないし、それが契機となって「他界」(推すことを辞めること)が発生するので、運営の皆さんはくれぐれも注意していただきたい。

 
5.良い曲を作れ

 こんな普通のことを書いているのは、その「普通のこと」がなかなか難しいからだ。もちろん歌やダンスのパフォーマンスを向上させることも必要なのだが、その結果として与えられるのがつまらない楽曲(それはサウンドも含め)では仕方がない。

 前述の「『次の10年』を生き抜こう。~2013年アイドルポップスベスト10まとめ」では、10曲中2曲しかメジャーの楽曲はなく、残りの8曲はインディーズだった。音源制作のための資本ではメジャーのほうが有利なはずだが、作家性を出すという点ではインディーズのほうが有利なのかもしれない。というわけで、ちょっと過剰なぐらいのエゴを楽曲に込めてほしいと願う次第だ。

 
 と、いろいろ書いてきたものの、まだ「物語厨を心酔させろ」「御用ライターを囲い込め」などの泥臭い話も運営に言いたいのだが、それはヲタの側から言うことではないだろう。2014年も素敵なアイドルのCDや現場に出会えることを願うばかりだ。
(文=宗像明将)

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