17日に開催された『第3回AKB48紅白対抗歌合戦』のフィナーレで、AKB48が来年3月29日・30日に女性アイドル初となる東京・国立競技場でのライブを予定しているとサプライズ発表した。同競技場は2020年の東京五輪に向けて来年7月から解体作業に入ることが発表されており、長期の改修を経て新たに完成する「新国立競技場」は五輪のメイン会場となる。解体直前にすべり込んだAKBは、現在の国立で最後のライブをしたアーティストになる可能性も高い。
AKBファンにとっては嬉しいニュースだが、これに困惑しているのが嵐のファンだ。
嵐は今年9月21日・22日に国立競技場でライブ『アラフェス 2013』を開催。当時、すでに改修は発表されており、新聞やテレビでは「国立最後のコンサート」と報じられた。同競技場は芝生を守るために年間で一組しかライブを許可しないという通例があり、常識的に考えれば最後のコンサートとなるはずだった。ライブの最中には、嵐のメンバーたちも「(自分たちは)国立で歌う最後の人になるんだね」「国立でできるのもこれが最後だよ」などとファンを盛り上げ、その感動に浸っていた。
ところが、来年3月のAKBコンサートが決定し、嵐のライブは「国立最後のコンサート」ではなくなってしまった。これに対して嵐のファンからは「国立の最後最後詐欺かよ」「せっかくのMCが台無し」「嵐が可哀想」などといった声が上がっている。
また、ファンは「アラフェス」のライブDVDへの影響も危惧。昨年の「アラフェス」は11月中旬にDVDの発売が発表されたが、今年は現在のところ何のアナウンスもない。発表が遅れている原因として、前述のMCやDVDの演出で「国立最後のアーティスト」と結果的に事実に反することをアピールしていたため、MCのカットや発売中止を事務所側が検討しているのではないかとのウワサが駆け巡っているのだ。
多方面に影響が出そうな状況だが、なぜ「国立最後」という言葉が一人歩きしてしまったのだろうか。
「嵐がライブを開催した時点では、確かに彼らが『国立最後のアーティスト』になる予定だったようです。しかし、その裏ではAKBの国立ライブが水面下で計画されており、後出しジャンケンのような形ですべり込んだ」(週刊誌記者)
ジャニーズのトップアイドルの顔を潰してまで「国立最後のアーティスト」の座をかっさらった形になってしまったAKBの発表。このウラには、東京五輪の“特需”に絡もうとするAKBグループの思惑があるようだ。
「AKBとタッグを組んでいる電通は、長年に渡って五輪の放送権やスポンサーシップ販売権を独占し、東京五輪の招致にも深くかかわっていた。今後の五輪関連イベントや宣伝事業なども電通の独壇場。いわば電通は、東京都や五輪関係各所とズブズブの関係にあります。AKB総合プロデューサーの秋元康氏は、それだけ巨大な力のある電通をコントロールできる数少ない存在。秋元氏は五輪ビジネスに参画する一つの手段として、AKBを東京五輪の顔として売り込もうとしている。そのイメージを印象付けるために『国立最後のアーティスト』の肩書きが欲しかったようです。実際には電通がAKB運営側の提案に乗る形で、他のアーティストが真似できないスケジュールでライブをねじ込んだ。国立サイドとしても、電通のゴリ押しでは断るわけにはいきません」(前同)
14日に開かれた安倍晋三首相と東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳らとの夕食会でも、日本を代表するエンターテインメントの一つとしてAKBのショーが披露された。この夕食会には、東京五輪招致を支援したASEAN首脳らに感謝の意を伝える意図があった。そこにAKBが出演したということは、すでに五輪ビジネスにガッツリと食い込んでいるのは間違いなさそうである。
とはいえ、人気下り坂といわれるAKBが国立競技場を満員にできるのかという不安もある。同競技場は東京ドームを超える約7万人という収容人員を誇る大会場。AKBは今夏『5大ドームツアー』を敢行したが、以前なら激戦となるチケット争奪戦で複数当選したという報告が多数あり、一部では「客席が埋まらずにタダ券をバラ撒いている」との情報まで飛び交った。
この状況を踏まえると、国立でもチケット販売は苦戦を強いられそうな気配だ。それだけの無理をしてでも、五輪ビジネスに食い込むメリットは大きいのかもしれないが…。
(文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops)