「幼女の3Dモデル」で児童性愛者をだまし討ち!? スウィーティ嬢は途上国の女児を救えるのか…

※イメージ画像:YouTube「Stop Webcam Child Sex Tourism」より

 近年におけるコンピュータ・グラフィクス(CG)の進歩はめざましい。映画やドラマ、アニメなどの映像作品では、もはやCGを一切使用しないもののほうが珍しくなりつつある。

 CG自体の歴史はそう短くない。CGを駆使し、絶滅した恐竜たちをリアルに再現して大きな話題となった映画『ジュラシック・パーク』(ユニバーサル)が公開されたのは、今からちょうど20年前の1993年だ。また、フルCGで製作された映画には1995年の『トイ・ストーリー』(ウォルト・ディズニー・スタジオ)や2001年の『ファイナルファンタジー』(ギャガ)などがある。『ファイナルファンタジー』といえば大コケ映画としても知られているが、その不評の理由のひとつには、当時の技術で作られたCGが、実際の人間の姿に近づいたために現実との些細な違いがむしろ気味悪く感じられる、いわゆる「不気味の谷」現象があったとも言われている。

 この「不気味の谷」は、「現実との些細な違い」さえも感じさせないほどのCG技術をもってすれば克服することが可能だと考えられており、進歩した現在のCG技術の粋を尽くせば、“実写そのもの”といえるようなCG映像を製作することができるのかもしれない。

 CGが実写に近づいていることを受けてか、今年5月に衆議院に提出された児童ポルノ規制法案では、児童を写実的に描いたポルノCGへの規制案も盛り込まれた。そんな「児童を写実的に描いた」CGが、児童買春に反対する市民団体によって、児童性愛者の特定に利用されていることが報じられ、話題となっている。

 国際児童保護NGOテルデゾム(Terre des Hommes)のオランダ支部が製作した、「Stop Webcam Child Sex Tourism」と題した約8分の映像によると、操作者の体の動きを再現できる、少女のリアルなCGモデルを開発。アムステルダムのテルデゾム事務所にいる男性がそのモデルを操作しつつ、オンラインのビデオチャットで、彼女に対して性的な行為を見せるよう迫った男性の個人情報を記録していたという。

 この、完全に“架空の”少女の名前はスウィーティ(Sweetie)で、フィリピンに暮らす10歳の少女という設定。ビデオチャットでの“見せ合い”には、主に男性側よりかなりの需要があるとされ、テルデゾムによると、実際にフィリピンなどの途上国では、このような一種の「家内制ポルノ」のために、スウィーティくらいの年頃の少女が利用されているとのことだ。

「いわゆる『ライブチャット』は日本にもある形態のサービスですが、映像のように証拠が残らないため、10歳程度の少女との『見せ合いオナニー』のようなことも可能となっています。そういった場合、ビデオチャット自体は無料のサービスを使い、匿名の課金サービスを使って送金を受け付けるという形態が主です」(実話誌記者)

 少女のモデルが極めてリアルに造形されていることもあってか、テルデゾムはこの方法で、スウィーティに局部を見せるように要求したり、自らのオナニーを見せたりした男性約1,000人を追跡し、メールアドレスやfacebookのアカウントなどの情報を記録。国際刑事警察機構(インターポール)を通じて、各国の治安当局者にそれらの情報を通達したとされる。

 日本では売春に及ぶ少女の側を補導するという動きが主だが、アメリカなどでは児童性愛者を捕まえるためのおとり捜査が許されており、インターネットを利用した性犯罪の捜査にもおとり捜査が多用されている。

 とはいえ、オナニーの映像などのプライベートなものを記録され、さらにそれを編集した映像の形で世界に配信されていることについては、プライバシーの重大な侵害があるように感じなくもない。また、このCGモデルでは局部こそ造形されていないが、児童性愛者を“釣る”目的で作られており、性的な目にさらされる前提のものだ。今年5月の規制案でふれられているような「児童を写実的に描いたポルノCG」にはあたらないのだろうか。

「児童性愛者を興奮させるという製作目的を達成しているようなので、ごく広義でですが、ポルノといえばポルノといえるかもしれませんね。映像によると、児童性愛者も出入りするビデオチャットに『Sweetie 10 f』というユーザー名でログインしています。この『10 f』というのは『10歳・女性』という意味で、本来はわざわざ名前の欄で明かす必要がないものなので、売春のような行為をするという意志表明のようなものです。児童被害の防止が最終的な目的とはいえ、こういった『なりすまし』も、また相手のビデオを録画して公開することも、そもそもチャットのマナーに違反しています」(ITライターの男性)

 技術の進歩により、画面の向こうにいるエキゾチックな少女が実在するかどうかさえ疑わしくなった現代。テルデゾムの実験は、途上国の少女が数多く被害に遭っていることだけでなく、現代のCG技術が「おとり捜査」に利用できる水準であることも示した。

 それだけに、現在俎上にある、CGを対象に含めた児童ポルノ規制には疑問がつきまとう。もしも官憲が、局部を造形した3Dモデルを利用すれば、「被害者のない犯罪」をいくらでも形づくることができるのである。

 虚ろな目をしたおさなげな10歳のスウィーティ嬢。彼女くらいの女児が性的搾取の被害に遭わないことを願うのはもちろんだが、それと同じくらい、彼女が「犯罪を作るための装置」にならないことを願わずにはいられない。
(文=是枝 純)

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