これも「ダヤ(ッ)」である。一人だけ気持ちよくなって、私を気持ちよくさせてくれないから、「ずるい」というわけだ。いやはや、一緒に笑っていいのか…対応に困ってしまった。辞めさせられたのではなく、その「ダヤ」が理由で辞めたらしい。
「厳しくてメイドを続けられない。」というのは聞いたことあるけど、「御主人様が早漏なので、メイドを辞めます」というのは…聞いた事がない。S氏の顔と颯爽とした態度からは、想像がつきにくい。
一度話し出したら、ピーナメイドのおしゃべりは止まらない。
「おっぱいしゃぶったり、あそこを触るのは少しだけ、おちんちん咥えて2~3回チュパチュパしたら、もう駄目。上になって入れて、1分もしないで、あっ…うっ~だからね」
と、ため息をついた。俺も一緒にため息をついていると、話は続いていた。
「あたしは、全然気持ちよくなってないから、もう一回って言うんだけど、おしまいって先に寝ちゃうんだ…あたし、何回か寝てるときに、そっとおちんちんしゃぶってあげたんだけど…はぁ~っって、気が付いて眼が覚めたときは、もうピュッ!て、出ちゃてるんだよ。早すぎるよ。…ダヤ・エ!」
これは「ずるい」のか…まあ、ピーナにとってみれば「ダヤ」なのであろうが…S氏は気づいているのだろうか。あの、怖いもの知らずにイエス・ノーをはっきりと言うS氏が、フィリピンの政財界にもちょっと顔の効くS氏が、早漏でピーナから「セックスはダヤッツ」と言われているとは。
たぶんS氏のことだから「いいんだ。俺が気持ちいいんだから…はははっ」と、笑い飛ばすだろう。奥さんは、なぜ車で2時間程度の場所なのに、別居してるのだろうと、余計なことを考えてしまった。
ピーナにとって、早漏は敵だ。遅漏のほうが喜ばれる。セックスをして気持ちよくなることが、人間の楽しみで生きている証なのだから、その時間が長く持続したほうがいい…と思っている。
それを5分も経たないうちに、現実に戻されては…また食べることと家族のことで、思い悩まなければならない。そんなこんなでモンモンとし、満足させてもらえない、若くて熱い身体をかわいそうに感じて辞めた。そのメイドの気持ちも、わかるような気がした。
「あなたはダヤ?」と、誘うような眼をされたが、同じビレッジ内でセックスフレンドを作るつもりはない。
5カ月後…
「いやぁ、またメイドを変えたよ。ダメだね若い子は…続かなくて。」
とS氏。
(続かないのは、Sさんでしょ。)
と、のどの奥まで出かかったが飲み込んだ。
そのメイドも、辞めた理由はS氏の「ダヤッ」にあるに違いない。この先、何人のメイドを辞めさせるのだろう。
2週間ほどしてモールへ足を運んだとき、マクドナルドで一人黙々とハンバーガーを口に運ぶS氏を、見てしまった。新しいメイドに、手土産にハンバーガーを買っていくのだろうか?
思わず「ダヤッ」と、つぶやいてしまった。
(文=ことぶき太郎)