「じぇじぇじぇ」「倍返しだ」ドラマに圧倒され2013年は一発屋芸人不在!?

※イメージ画像:『あまちゃん 完全版DVD-BOX2』TOEI COMPANY,LTD.

 2012年にはスギちゃんの「ワイルドだろ~」やCOWCOWの「当たり前体操」などが一世を風靡した。さらに遡ってみれば、2011年には楽しんごの「ラブ注入」、2010年にはねずっちの「整いました」などがあり、2009年には髭男爵やジョイマン、2008年にはエド・はるみなどがいた。それ以前にもさかのぼれば、ダンディ坂野、テツandトモ、ムーディー勝山といった面々が浮かんでくる一発屋芸人たち。しかし、なぜか今年はそんな人材が見当たらない。

 あえて名前を挙げれば、昨年末から元AKB48・前田敦子のモノマネで注目を集めたキンタロー。くらいなもの。しかし、彼女のお決まりのギャグといえば「フライングゲット!」とAKB48の曲をそのまま言っているだけのもので、どうしても爆発力に欠ける。河口こうへいとの恋愛沙汰の影響か、バラエティのトークでも、「顔がでかい」「ブサイク」などとツッコまれても、「これでも可愛いって言ってくれる人がいるんです」や「顔だけ見れば可愛いんですよ」と、芸人らしからぬ発言する。そうした姿勢がどう影響しているかはわからないが、当初期待されたほどのブレイクには至らなかったというのが現実だろう。

 一方、芸人のギャグは不発だが、『あまちゃん』(NHK)の「じぇじぇじぇ」や『半沢直樹』(TBS系)の「倍返しだ!」は、すでに流行語入選は確実と言われるほどの浸透ぶり。さらに、「今でしょ」の予備校講師・林修は、冠番組を持つほどの人気を見せ、一発屋芸人ならぬ一発屋講師として、ただいまブレイク真っ只中。2010年や2009年も、一発屋芸人不在と言われたが、冒頭に記したように、ねずっちや髭男爵などが出てきた。今年の不作具合は、いったいどうしたことだろう。

 原因の1つに考えられるのは、女性芸人の台頭だろう。先日放送された『27時間テレビ』(フジテレビ系)でメインを務めた森三中やオアシズらの11名を筆頭に、今年は女芸人が人気を集めた年だった。しかも、その人気は、何かの一発ギャグや大きなきっかけがあって集まったものではない。以前からテレビで活躍していた彼女たちが、徐々に注目を集め、気づけば先頭に立っていたという類のものだった。彼女たちの活躍が、一発屋になるような若手芸人たちの活躍の場を埋めてしまったといえる。

 また、女芸人のほかにも、注目された人々というのがいる。それは、林のような、芸人ではないが面白い個性を持った人々だ。たとえば、ローラのようなハーフ系モデルタレントたち。彼女たちは、その強い個性のおかげで、バラエティーに引っ張りだこの存在となっている。さらに、坂上忍や淡路恵子などといった俳優陣も、豊富な人生経験とユニークなキャラクターで、バラエティーの常連組みとなっている。ほかにも、武井壮や壇蜜といったキャラそのものが濃いタレントがブレイクしている。そうした人々の活躍が、若手芸人の活躍する隙を狭めてしまったのだろう。

 6月に放送された人気バラエティー番組『人志松本のすべらない話』(フジテレビ系)が、11.5%という過去最低の平均視聴率を記録している。こうした、トップクラスの実力を持つ芸人たちによる番組の凋落は、“芸人”そのものの人気低迷を示しているのかもしれない。つまり、芸人が視聴者から飽きられ始めたということだ。そして、それゆえ毎年出ていた一発屋芸人というのも、今年に入っていまだに現れないのかもしれない。

 新しいジャンルから次々と売れっ子が生まれる今のテレビバラエティ界。次にどんな人間がブレイクするかはわからないが、ますます若手芸人が売れなくなっていくのは間違いないだろう。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
著書『松本人志は夏目漱石である!』(宝島社新書)

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