22日の朝7時ごろ、宇多田ヒカル(30)の母親としても知られる歌手・藤圭子さん(62)が東京・西新宿のマンションから転落したのを通行人が発見。心肺停止状態で病院に搬送され、間もなく死亡が確認された。警察は飛び降り自殺とみており、知人男性が住んでいる現場近くのマンション13階の一室から飛び降りた可能性が高いという。このショッキングなニュースに「なぜ?」「どうして?」と世間は騒然となっている。
浪曲師の父親と三味線瞽女(ごぜ)の母親との間に岩手県で生まれた藤さんは、幼いころから両親と共に旅回りの生活を送り、17歳の時に『さっぽろ雪まつり』のステージで歌っている姿を目にしたレコード会社関係者にスカウトされた。69年に「新宿の女」でデビューし、影のある容姿とドスのきいた声で新人ながら歌謡界の話題を独占。70年3月に発売されたファーストアルバム『新宿の女』は20週連続1位という記録を打ち立て、同年4月発売のシングル「圭子の夢は夜ひらく」は77万枚売上げる大ヒットで日本レコード大賞大衆賞を受賞した。
その後は前川清との結婚・離婚を経て一時引退し、83年に音楽プロデューサーの宇多田照實氏との間に長女・光(現在の宇多田ヒカル)をもうけるも、長らく表舞台から遠ざかっていた。そんな彼女に再びスポットが当たったのは、宇多田の母親としてだった。
宇多田は93年に「U3」(父・宇多田照實、母・藤圭子、娘・ヒカルのファミリーユニット)として米国でインディーズデビューし、逆上陸するかたちで98年に1作目のシングル「Automatic」を発売。いきなりミリオンセールスを記録し、のちに「演歌歌手・藤圭子の娘」ということが世間に知られ、往年のファンを驚かせた。
宇多田が飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍しだすと、藤さんはラジオ番組で娘自慢を繰り広げたり、娘の全国ツアー公演に飛び入りしたりと幸せそうな様子だった。だが、私生活では照實と結婚・離婚を繰り返し、一部で精神不安がささやかれ、今年3月頃には行方不明説が流れるなど影がつきまとっていたのも事実である。
「娘がデビューしてから比較的安定していた藤さんの様子がおかしくなったのは、06年にニューヨークの空港で多額の現金を没収される騒動があった頃から。あの事件を機に、藤さんの消息がつかみづらくなった。ここ数年は親しい知人がケータイに連絡しても電波が届かないか留守電になり、折り返しの連絡も全くない。一説には、照實氏との離婚の際に財産分与で娘・ヒカルの関連で稼いだ数百億円を手にし、米国で悠々自適の生活を送っているといわれていたのですが…」(芸能関係者)
契機になった06年の事件とは、藤さんがJFK国際空港で42万ドル(当時のレートで約4900万円)を機内に持ち込もうとし、全額を没収された騒動だ。麻薬犬による検査で現金から微量の違法薬物が検出され、当局は「現金が麻薬取引のために使われたか、あるいは使われる意図があった」として現金を差し押さえた。だが、09年にニューヨークの連邦地裁が「証拠不十分」として当局に返還を命じ、全額が藤さんの元に戻っている。
最近は藤さんが表舞台に現れることは全くなくなり、今年3月に「圭子の夢は夜ひらく」などを手掛けた恩師である作詞家・石坂まさをさんが亡くなった際にも、通夜・告別式に姿を見せなかった。業界関係者の間では「おカネはあるし、離婚で身軽になって海外を遊び回っているのだろう」といわれていたが、まさか新宿で亡骸が発見されるとは…。
新宿にいた経緯や藤さんと事件直前まで一緒にいたと思われるマンション住人の男性の存在など、まだ分かっていない謎が多い今回の事件。遺書らしきものもなく飛び降りた理由も分かっていないが、何よりも心配なのは娘・宇多田の精神状態だ。長期休養を経て最近徐々に活動を再開していた宇多田だが、母親の死というショッキングな出来事によって再び塞ぎこんでしまう可能性もある。現在、宇多田のTwitterアカウントにはファンから励ましのコメントが大量に寄せられているが、それを糧に母親の死を乗り越えてほしい。
(文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops)