※前編はコチラから
半年前、41歳でデリヘルデビューした、遅咲きのセックスワーカーI子。4歳から角オナニーに目覚め、小学校2年生で「お医者さんごっこ」による性的経験に触れ、高校時代は教育実習生と付き合う……だいぶ開放的な印象を受けるかもしれないが、高校卒業後に彼女が就職したのは銀行だった。筆者が、「意外ですね」と言うと、
「案の定、長続きしなくて数カ月で辞めちゃいました」
銀行を辞めたことで家に居づらくなったというわけではないが、I子はなんとなく家出をする。とりあえず、進学した高校時代の友人たちに片っ端から電話をかけた。友人たちが大学で親しくなった仲間には、1人暮らしをしている男性がたくさんいる。I子は、1人暮らし男性を紹介してもらい、ひと晩泊めてもらう代償として股を開く生活をするようになった。一宿一飯の恩義がセックスだったというわけだ。
そんな生活も長くは続けられない。結局I子は家に戻り、父親の運送会社を手伝うことになった。高校3年の冬休みに取得した自動車免許が役に立つ時がきたのだ。I子はトラック運転手になった。
トラック運転手の仕事は、朝は早いし夜は遅いし、体力的には相当キツかったが、給料は良かった。20代前半で、1千万もの貯金ができたというのだから、かなり羽振りが良かったのだろう。
そんな折、I子は自分の身体の異変に気付いた。妊娠したのだ。相手は、仕事を通して知り合った14歳年上の既婚男性。彼にも周囲にも出産を反対されたが、I子には堕ろす選択肢はなかった。
「貯金もあったし、自分1人でも子供を育てていける自信はあったんです」
そしてI子は元気な男の子を出産する。
30代になり、再びI子は妊娠した。
「2人目の子は、父親が誰だかわからないんですよ。上の息子と同じかもしれないし、その人とは別に付き合っていた男性かもしれないし」
後者の男性からは、妊娠を機に結婚を申し込まれたが、I子は断った。借金がある男性だったので、一緒になっても苦労するだろうという思いからだ。
父親が誰であろうと、我が子であることに変わりはない。I子は、31歳で女の子を出産した。
2人目の出産前後、別の転機も訪れる。上の息子の父親である14歳年上の男性が不動産関係の会社を起こすことになり、I子は彼のサポート役として不動産業に携わることになったのだ。
不動産の仕事は、銀行の仕事よりもトラックの仕事よりも面白かった。性に合っていたのだろう。経営も順調だった。そんな矢先、彼が病で倒れた。がんだった。
彼が闘病生活に入ったため、会社の経営はI子が1人で担うことになった。しかし、時期が悪かった。ちょうど、耐震強度偽装事件の影響で不動産業界全体に不況の波が押し寄せ、加えて某大手マンションデベロッパーが会社更生法を申請したあおりを受け、彼女たちの会社に入ってくるべき3500万円が入ってこなくなった。そういった諸々の事情で、会社は倒産する。
それだけでは済まなかった。I子は、会社が銀行から借り入れする際に、経営者やその家族が債務の返済を保証する「個人保証」を引き受けていたのだ。いわば、連帯保証人のようなもの。多額の借金を背負ったI子は、とにかく働くことにした。日本料理店の仲居として働き始めるが、朝から晩まで働いても、手取りはせいぜい20万円弱。これでは、借金返済どころか息子と娘を食べさせていくことすらままならない。41歳の誕生月、ついにI子はデリヘル業の門を叩くこととなった。
「体験入店で入った初日は、堕ちるところまで堕ちたなぁという思いでしたね」
それでも、3人の男性客を相手にして、3万円受け取れたことが、I子の背中を後押しした。
「短時間でこれだけ稼げるのはありがたいことだと思いました。これで、息子と娘に美味しいものを食べさせられると思うと嬉しかった」
こうしてI子は、遅咲きのセックスワーカーとなった。デリヘルの仕事で一番大変なのは、なんといっても本番行為を要求する男性客を上手にかわすことだ。店に内緒で本番をしているデリヘル嬢もいるのでは、と尋ねたところ、「実はいま、好きな人がいるので、ほかの男性とは本番をしたくないんですよ」と、はにかんだ。懐に余裕があった頃、外車の趣味を通して知り合った男性。クルマの話だけでなく、カラダの相性も良かった。
「今までのセックスは、寂しさを埋めるために惰性でやっていたんだと気付きました」
M気質なI子にとって、彼とのSMチックなセックスは実に刺激的だった。借金でクルマを手放してからは疎遠になっているが、いまだに想い続けている。
「彼が住んでいる街でも風俗のお仕事を始めようかと思っているくらいです。偶然出会えたらいいなあって」
今の店でナンバーワンを目指す気はないのかと訊ねたところ、「ナンバースリーくらいでいいかな」という答えが返ってきた。
「ひっそりと借金を返して、そこからお金を貯めて、いつか起業できたら良いですね。風俗関係の会社にも関心があります。キャバ嬢という職業が市民権を得たように、風俗嬢もそうなればいいなぁ」
いま現在、I子を指名する常連客には会社経営者も多いという。「子供に何か買ってあげて」とチップをくれたりするのもありがたいが、なんといっても身になっているのは、彼らとの会話だ。
「社長さんとお話させて頂くと、勉強になることがいっぱいあります」
それがいつか、借金返済後の彼女の人生に、大きく役立つことだろう。
【現役セックスワーカーの素顔と本音】バックナンバー
第8回援交発、ホテヘル経由の手コキ嬢
第7回ハプニングバー店員発、ヘルス嬢経由のメンズエステ嬢
第6回「初体験は小2」ピンサロ出身のホテヘル嬢
第5話ヌードモデル発、OL経由のホテヘル嬢
第4話バツイチホテトル嬢のセックス観
第3話探偵ときどきソープ嬢
第2話AV嬢発、デートクラブ経由の手コキ嬢
第1話援交発、スナック経由のヘルス嬢