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5月23日に放送された『アウト×デラックス』(フジテレビ系)が『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の視聴率を上回ったとして話題を集めている。
原則、今年の1月をもって一般からの視聴率の問い合わせに応じなくなったフジテレビ。しかしアウトデラックスに出演したターザン山本(67)が、放送翌日の朝にTwitterで「大変だあ、大事件だあ。『アウト×デラックス』が初めて視聴率で『アメトーーク』に勝ったのだあ。10.4と10.2。最高視聴率12.2はなんと私が出ていたシーンとか。一体、どうなっているの?」(原文ママ)と投稿。これを機に「アメトークを超えたアウトデラックス」という文字がネット上に駆け回ったのだ。
そんな歴史的瞬間を受けて、アウトデラックスに出演している南海キャンディーズの山里亮太(36)は、自身のラジオ番組で、「大横綱アメトークさんに視聴率で勝ったんだよね。すごいのよ。これって快挙よ」と興奮気味で語っていたほど。出演しているタレントが、ここまで露骨に裏番組に視聴率で勝ったというのも珍しいが、それだけアメトークが絶対的な強さを誇っているということだろう。
こうした経緯があったせいか、翌週30日の放送前には2ちゃんねるで「どっちを見るか」ということが話題に上がっているほど。残念ながら現段階で記者は数字を確認できなかったが、前の時間帯に放送している『ラストシンデレラ』(フジテレビ系)が14.8%という高い数字ということもあり、2週連続アウトデラックス勝利というのも十分有りえる。
30日の放送は、総集編的なもので構成されたアウトデラックス。それでも、かつての出演者たちの、通常放送ではカットされていた過激な言動の数々は見ごたえ十分だった。コウタ・シャイニング(32)の「婚約者を某局アナウンサーに奪われた話」や、ピー音連発の鬼束ちひろ(32)、「神の舌ならぬ神の舌技を持つ」と豪語する石神秀幸(41)などのアウトな人々のさらにアウトな一面は、カットされたシーンのつぎはぎとはいえ新鮮だった。
一方、アメトークは「すぐ緊張しちゃう芸人」という企画で、アンジャッシュの児嶋 一哉(40)、キャイ~ンのウド鈴木(43)、森三中の黒沢かずこ(34)、FUJIWARA の藤本敏史(42)といった番組に馴染みの深い芸人たちが出演。企画としては初物であるが、芸人たちのギャップを扱うという意味で言えば既視感のある内容で、どこかマンネリ感の漂うものだったのは否めない。やはりアウトデラックスの方が新鮮だったといえる。
しかし、フォーマットが確立されているというのは、視聴者に安心感を与える。「○○芸人」の“○○”にあたるテーマによって見る見ないの判断が容易にできるからだ。すでに27巻も発売しているDVDが売れ行き好調なのも、このわかりやすいフォーマットのおかげだろう。いわばアメトークというのは、毎週、芸人たちのメンツを入れ替えて、彼らの趣味や特技を特集する、雑誌の別冊永久保存版のような番組といえる。家に置いておきたくなるような番組ということだ。
対して、タレントに限らず一般人も含めたアウトな人々にスポットを当てるアウトデラックスは、新鮮なネタと、その量で勝負するネットニュース的。芸人とは違って、喋りのプロではない人々が多く登場するこの番組は、新鮮で衝撃的だがDVDなどには向いていないかもしれない。アウトな人々のアウトな一面というのは、一度見れば十分だからだ。
とはいえ、視聴率でアウトデラックスがアメトークを上回ったといっても、レギュラー放送時の時間帯は、アウトデラックスが23時から23時30分、アメトークが23時15分から24時15分までと、微妙にズレている。アウトデラックスを見て、途中からアメトークを見るという視聴者は多いだろうし、今では録画機器も充実している。視聴率での勝負ばかりが注目されるが、その意味するところはほとんどない。視聴者からすれば、面白ければいい。視聴率争いが、番組を面白くしてもらえれば嬉しい限りだ。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/)
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