アイドル名鑑』
著:諏訪稔/河出書房新社
AKB48の大ブレイクは自分もアイドルになれると勘違いした女子を爆発的に増やし、それが新たな悲劇を招いている。「AKBになれなかった娘たち」=地下アイドルの現状はさらに過酷度を増し、今や地下を通り越した地底アイドルと揶揄されるコたちまでいるという。そういった境遇のコたちは、アイドルとしての人気はもちろん皆無、レッスン代でお金もなく、アルバイトで時間もない八方塞がり状態で、困り果ててファンと“よからぬ関係”を持つコまでいるようだ。
都内のライブハウスでは毎日のようにアイドルライブが開催されており、出演自体はそれほど難しくはないとも言われている。さほど客が多くなくとも運営できている=儲けは確保できているように思えるが…。地下アイドルを多くかかえる芸能事務所の社長は現状をこう憂う。
「女のコのギャラは完全歩合制なんです。3千円ほどの入場料のうち、アイドル側の収入は指名予約(ブログなどを経由した事前予約)での1名につき5百円のチケットバックとライブ終了後の物販売上げが全て。シングルCDやTシャツなどのグッズがあればいいんですが、新人はチェキでの2ショット撮影やブロマイドしか売り物がない。そもそもお客さんの数も10名程度では物販コーナーは閑古鳥、必死の呼び込みの声も虚しい」
さらに、自腹の交通費や衣装代、レッスン代でジワジワと赤字が増えていくのだという。売上げも事務所が大半を持っていってしまい、結局はアイドル本人がメイド喫茶やガールズバー、キャバクラなど他のアルバイトを複数掛け持ちしながら出演するのが当たり前の多忙な日々を送ることになる。ライブだけで生活など夢のまた夢なのだ。
絶対匿名を条件に現役でライブに出演している新人アイドルAちゃん(20歳・大学生)に話を聞いた。
「デビューは今の事務所の社長にTwitter経由でスカウトされたのがきっかけ。ライブは週に多くて3回、16時からリハーサルで22時まであるからアルバイトも入れられないし、学生じゃないと無理。私の場合、半年やっても全然人気なくて予約ゼロも珍しくない(笑)。いつもカバーばっかり歌ってて、オリジナルの話なんか全く出ません。人のこと言えないけど、ルックスも含めて『これでアイドル?』ってコなんていっぱいますよ。みんなお金がないから内緒でファンとつながるコの噂は絶えませんね。アキバデートを目撃されたり、持ち物や服装が派手になるから分かりやすい(笑)。楽屋では出演者同士で“つながり疑惑”とかいつもヒソヒソ情報交換してます。事務所社長のカノジョになるのもありがちな話なんですけど、アイドル志望のコには夢見がちな性格が多いから普通のコよりむしろ騙されやすいかもしれないですね。私はもう就活までの趣味と割り切ってます」
“なんちゃって芸能活動”を自覚するアイドルと、ファンや事務所社長と“関係”を持ってでもアイドルという夢にしがみつきたい女のコたち。前出の芸能事務所の社長曰く「地底アイドルたちは、口がうまい事務所関係者やファンたちの適当なアドバイスに真剣に耳を傾けてしまうような、健気なコが多い」のだという。メジャーデビューを夢見て頑張る地底アイドルが陽の目を見る日は果たして来るのだろうか?
(文=ぶり)