2013年6月号』コアマガジン
去る4月19日、アダルト系出版社「コアマガジン」(東京・豊島区)に警察の強制捜査が入った件について、業界ならびに出版界にさまざまな波紋を呼んでいる。この件については、日刊サイゾーでも速報と続報が報じられている。
今回の捜査に関しては、関係者の証言では「それほど大がかりなものではなかったらしい」という証言もあるが、詳細は不明である。捜査当時に同社ビル内にいた別の部署の編集者も、「いつの間にか(捜査が)終わっていた」と話すほか、「よくわからない」という声も多い。もっとも、アダルト系の出版社は、いざ警察官が乗り込んできても、それほど騒いだりはしないものである。「警察よりも、取次ぎやコンビニのほうがはるかに怖い」というアダルト編集者も少なくない。
捜査容疑など詳しいことはわかっていないが、事件後の24日、コアマガジンは自社ホームページにおいて、月刊漫画誌「コミックメガストア」を4月17日発売の6月号で、月刊誌「ニャン2倶楽部」は4月16日発売の6月号で、それぞれ休刊すると公表した。いずれも、今回の強制捜査が入った雑誌である。休刊の理由については不明である。
また、警察の捜査時に放送メディアの取材クルーが同行または追従していたとの一部情報もある。これについては、警察がいわば宣伝効果を狙って捜査情報をメディアにリークすることは珍しくない。しかし、結果的にこの事件は報道されることはなかった。そのため、この事件はインターネットでは話題になっているが、出版関係者やジャーナリストの間でも、意外に知られていない。
今回の捜査ではいろいろと不明確なものが少なくないが、そのひとつが警察の意図がよくわからないことだ。一部で「見せしめ」という意見があるが、それならばリークしたメディアに少しばかり圧力をかければ夜または翌日のニュースで報じられるはずだ。
あるいは、警察が新たな利権獲得のための布石として活動しているのではという憶測もある。現在、警察は大量に発生し続けている退職者のための天下り先の確保に躍起になっており、そのために次々にその受け皿を作り出してきた。たとえば、特殊暴力防止対策連合会、略称「特防連」と呼ばれる組織などはそのひとつである。この組織は「総会屋等特殊暴力の排除を目的」として企業等への指導を行っているものだが、その実態は「かつての総会屋まがい」(某企業の総務社員)という。出版界への圧力と管理を強化するための一環として、今回の強制捜査が実施されたのではないかとの見方もできなくもないが、また憶測に過ぎない。
また、一部では「ワニマガジンに移籍した編集者と、彼らが作っているマンガ誌はどうなるのか」との危惧の声もある。たしかに、かつてコアマガジンの「漫画ホットミルク」の編集スタッフのほとんどがワニマガジンへと移り、現在では「X-EROS」(ゼロス)という漫画雑誌を作製している。「作家もかぶっているし、似たような作りだから次にたたかれるのでは」(「ホットミルク」時代からの読者)という意見もある一方、「それはわからない」という声も多い。
「有害図書などに指定される雑誌や漫画をみても、その基準がさっぱりわからない。『何でこれがダメで、こちらが大丈夫なの』というケースばかり。今回(のコアマガジンの件)も、警察が何か気に入らないことでもあったんじゃないですか」(アダルト系編集者)
アダルト系の出版社は「警察が刺そうと思えばいつでも刺せる」という状況にある。警報でいう「わいせつ」はいくらでも解釈が可能だし、青少年健全育成条例にしても、その条文は極めてあいまいで、警察がその気になれば、いくらでも強権を発揮できる仕組みになっている。
今回の事件が、単発で終わるのか、それとも次のステップに進むのか。今後も注視したいところである。
(文=橋本玉泉)