~2011年総決算~』アニプレックス
12日に放送された『カスペ!ウチくる!? 15周年!~節目で聞いちゃいましたスペシャル』(フジテレビ系)に爆笑問題の太田光(47)と田中裕二(48)、そして太田の妻であり所属事務所の社長である太田光代(48)が揃って出演し、今年で芸歴25周年を迎えた爆笑問題の歴史について語った。
興味深かったのは、1990年代初頭の“爆笑問題の芸能界干され騒動”についての話だ。その理由としてたびたび取りざたされている、ビートたけし(66)の代役で出演した『オールナイトニッポン』(ニッポン放送)での太田の「たけしは死にました」発言の影響や、ダウンタウンの松本人志(49)との軋轢などについては一切触れなかったものの、当時を振り返って光代は「(所属事務所への)不義理」とだけ語りながら、間違いなく爆笑問題の再浮上のきっかけになった93年のNHK新人演芸大賞受賞後も「シフトがあるから」「7年勤めて簡単に辞められない」「オレほどできるバイトはいない」とコンビニのアルバイトを辞めなかった田中の奇人ぶりを強調した。
そんな田中について、伊集院光(45)は『深夜の馬鹿力』(TBSラジオ)の中で、「爆笑問題で本当にどうかしているのは田中裕二」と語り、番組内で流れたVTRの挽肉がミミズに見えたなどと言って勝手に不機嫌になるなど、その田中の分からず屋は尋常ではないと指摘する。また、爆笑問題を最もよく知る光代も、普段は夫である太田の愚痴ばかりこぼしている印象があるが、「田中裕二と夫婦として20年以上暮らせる女性は絶対に存在しない」と断言するほど田中というのは癖のある人物らしい。
田中本人も、「ネコの悪口を言うやつとは仕事ができない」「一番力を入れている仕事は東スポの競馬記事」と豪語し、密着ドキュメンタリー番組として知られる『情熱大陸』(TBS系)のカメラを「競馬予想するから」と言って追い出すなど、およそ芸人とは思えないような主張を平気でする。
さらに、爆笑問題の2人の間でも田中の身勝手ぶりは発揮されているようで、若かりしころに何度かあった解散の危機というのもすべて田中のブチ切れによって招いたものだという。そんな事態も、太田の「お願いだから、解散だけはしないで」という平謝りによって事なきを得てきたというから、普段テレビで見かける2人からは想像できない関係性というものがあるのだろう。
そんな2人を見事に再び世に送り出した張本人として知られる光代は、芸能事務所の社長としてだけでなく、これまでにもハーブやワインなどの事業で成功を収めてきたヤリ手実業家としても有名。女性層からの人気も高くカリスマ性抜群で“政界に進出すれば間違いなく当選する逸材”と業界ではもっぱらの評判だ。『ウチくる!? SP』では、もともと所属していた太田プロに謝罪をして戻って欲しかったと言っており、芸能事務所を立ち上げる気などなかったと振り返っていたが、その義理堅さが多くの人々から支持され、また爆笑問題を成功に導いたようだ。
故・立川談志は太田に「絶対田中だけは切るな」と言っていたという。また、ダウンタウンの松本は、『放送室』(TOKYO FM)の中で、「そもそもお笑いの才能があるやつなんて根暗。そんなやつは芸能界に入ろうなんて考えないし、ましてや成功するわけはない。でもオレが成功したのは無理やりにでもひっぱってくれた人間がいたから。オレの場合、それが浜田だった」と語っている。高校時代一言も喋らなかったという太田光もまた根暗といえるだろう。そんな太田の才能を自然とコントロールし、表舞台に立たせたのが田中なのかもしれない。そしてその秘訣は、太田にボロクソに言われながら平然と笑っていられ、それでいてときおり極度のわがままを平気で見せてしまう胆力にあるといえる。だから太田はのびのびと自分の笑いに集中できるのだろう。
演芸大賞を受賞しながらコンビニのバイトを辞めず、ネコの悪口を言う人間とは仕事ができないと断言し、競馬の予想を何よりも重要視し、太田光という異能を自在に操る田中裕二の才能は底知れない。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/)
著書『松本人志は夏目漱石である!』(宝島社新書)