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日本代表「侍ジャパン」の第2ラウンド進出が決定し、盛り上がりが増しているワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。テレビ朝日系で放送された試合中継も高視聴率を記録しており、2日のブラジル戦が平均視聴率25.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)、3日の中国戦は平均視聴率23.2%(前同)をマーク。今年1月14日以降、視聴率20%超えの番組はこれ以外になく、国民の注目度の高さをうかがわせる結果となった。
ところが、中継に対する意外な不満も噴出している。WBC侍ジャパンの公認サポーターに就任したSMAPの中居正広の存在が、視聴者の間で物議を醸しているのだ。
これを受けて3月4日付けの東京スポーツは「中居黙れ 解説者気取り」の見出しを一面に掲載。素人が解説にまで出しゃばることだけでなく、ポケットに手を入れながら取材をしている写真なども掲載し、日に日に中居に対するネットバッシングが高まっていると報じている。中居は試合開始前に古田敦也や工藤公康といった元プロの解説陣に交じって選手の状態などを解説し、試合開始後にはグラウンドレベルからベンチの様子などをリポート。 素人にもかかわらず試合の要所要所でコメントをはさんでくるため、視聴者から「ウザイ」という声が上がる事態になってしまったようだ。
ネット上の批判を拾ってみると「WBCなんで中居君が解説してるん? 真剣勝負に水差すな」「中居は素人のくせに何であんなに偉そうに解説してるの」「中居はただイチバン良い席で観てるだけやんw」などといったコメントが目につく。その一方、大の野球好きで知られる中居の知識や解説力を認める声もあり、「中居の解説は下手なプロ野球OBより分かりやすい」「中居くんの解説は本格的で、聞いてるだけじゃ芸能人だとわからないよな」「野球に興味がないけど中居クンが出てるから中継を見てるという人も多いのでは」といった擁護コメントも数多く書き込まれている。
昨年の日本シリーズでKAT-TUNの亀梨和也が副音声ゲストとして出演した際は、立場をわきまえた控え目なトークが野球ファンからも好評だった。今回のWBCにも、一部で「中居より亀梨クンを出すべき」との意見が上がったことをきっかけに、中居ファンと亀梨ファンによるバトルまで巻き起こっているようだ。
中居の起用は賛否両論といった状態だが、ジャニーズタレントのスポーツ番組への出演が物議を醸すのはWBC中継に限ったことではない。同じSMAPの香取慎吾は、テレビ朝日のサッカー日本代表応援団長として中継に度々登場。香取が会場に足を運んだ試合は日本代表が負けないという不敗神話も生まれたが、それまでサッカー好きを公言していたわけでもない彼の“にわかっぷり”はサッカーファンから大不評を買っている。また、TOKIOの国分太一はフジテレビのフィギュアスケート中継に04年からかかわっており、同じくフジの『すぽると! 土曜版』にレギュラー出演、同局のロンドン五輪中継キャスターなども務めた。だが、国分は野球やサッカーの熱烈なファンとして知られているものの、フィギュア好きというイメージは全くなし。実際にフィギュアに対する情熱も感じられず、視聴者から「芸能人を使うなら、せめてフィギュアに愛情のある人を出してほしい」という批判が起きている。
このような厳しい意見が聞こえているにもかかわらず、なぜジャニーズタレントがスポーツ中継に起用され続けるのだろうか。
「ジャニーズ事務所としては、スポーツ番組はタレントに爽やかなイメージをつけることができ、新規ファンの開拓にもつながる。局側としても、スポーツに興味のない視聴者や女性層にも番組をアピールできるため、利害が一致しています。それだけでなく、近年のドラマやバラエティーの不振も影響しています。事務所側はタレントの仕事の幅を広げる必要性を感じており、スポーツ番組だけでなく報道や情報番組にまでジャニタレの進出が増加しました。人気があるというだけで否応なしにジャニタレを見せられる視聴者や、彼らの起用によって端に追いやられる本職のキャスターや解説者はたまったものではないでしょうが…」(芸能関係者)
ジャニーズも歌って踊っていればいい時代ではなくなったようだ。
(文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops)