ゴールデンバラエティがわずか5回で終了! 2012年フジの凋落

※イメージ画像:フジテレビ『世界は言葉でできている』HPより

 昨年、年間視聴率三冠を8年ぶりに日本テレビに奪われたフジテレビ。王座奪還を掲げた今年だったが、トップ返り咲きどころかテレビ朝日の台頭で第3位を死守するのがやっとというのが現状。1980年代から「楽しくなければテレビじゃない」というキャッチフレーズの元、“バラエティのフジ”の地位を確固たるものとしたかつての勢いは完全に消えうせてしまったかのようだ。そんなフジテレビの凋落を象徴するように、今秋、満を持してスタートしたゴールデンタイムの新バラエティ番組『世界は言葉でできている』が放送開始からわずか5回で打ち切りという悪夢が現実のものになってしまった。もちろん原因は、わずか5%程度しか稼がなかった驚くほど低い視聴率にあるのは言うまでもない。

 昨年の韓流偏向報道批判でネットユーザーたちを敵に回し、それまでは批判するためにも見ていたネットユーザーという視聴者を完全に失い、今年3月に発行された『週刊文春』(文藝春秋)では2003年から放送されていた『退屈貴族』での事故隠蔽疑惑が取りざたされ、自社制作のドラマや映画でヒットを連発していた『海猿』(小学館)も、作者の佐藤秀峰による「信頼に値しない企業」「次回作は絶対にない」と見切りをつけられ、看板アナウンサーである伊藤利尋の接触事故や一般社員による器物損壊や飲酒運転での逮捕などといった不祥事が相次いだフジテレビ。

 これまでのように、“楽しくなければテレビじゃない”を標榜するフジテレビにとってみれば、いかなる批判や非難も、番組コンテンツが支持を受けていたころならまだ良かった。しかし、度重なる不祥事に加えて、今年はその生命線だった番組自体が低迷するという最悪の事態に。たとえば改革の旗振り役として抜擢された大多亮常務の肝煎り番組『アイアンシェフ』は、ゴールデンタイムとしては完全に落第点の10%程度をウロウロするのがやっとというのが現状。にも関わらず、大晦日には大々的に放送される予定だというから、フジテレビの番組編成がいかに苦しいかがよくわかる。

 今夏の大幅な人事の刷新によって断行された大規模な番組改革。秋には約3割の番組がリニューアルされ、長年続いた『HEY!HEY!HEY!』や『はねるのトびら』を終了させた。しかし相変わらず続く、『笑っていいとも!』や『SMAP×SMAP』などは、“かつての人気番組”というレッテルが完全に定着してしまっているまま。その原因は、多くの関係者が指摘するように、新鮮味のないキャスティングとマンネリ化した企画にあるというのは誰の目にも明らかなところだろう。

 とはいえ昼間のワイドショー『知りたがり!』にロンドンブーツ1号2号の田村淳を抜擢し、『笑っていいとも!』にアスリートタレントの武井壮や劇団女優の伊藤修子を起用するなど、新鮮味を出そうと必死な姿勢は伺える。が、そもそもそのチョイス自体がいずれも疑問符のつくものばかり。武井や伊藤に罪はないが、なぜ自分たちがそこにいるのかも理解できていないような彼らには、まるで吊るし上げられているような印象を抱いてしまい、見ている視聴者が不安になるキャスティングだ。

 さらに、今年の局のキャッチフレーズが“ピカる★フジテレビ”だったことでもわかるように、局が推しているバラエティ『ピカルの定理』も、出演陣の空回りだけがやたらと目立ち、いったいどこで笑っていいのかすらわからない。これまで他局を圧倒していたバラエティ番組で完全に迷走するフジテレビ。韓流偏向批判や隠蔽体質、社員の不祥事などさまざまな点で批判されているが、そもそも“楽しくなければテレビじゃない”と自分たちで言っていたように、番組が元気ならここまで低迷することはなかっただろう。さまざまな局批判が低迷を招いたのか、番組の低迷が局批判を増長させたのか。やはり記者は後者のように思う。面白い番組を作っていれば、2012年のフジテレビがここまで凋落することはなかっただろう。この危機を脱するには、批判や非難を物ともしないダントツに面白い番組が必要なのは言うまでもない。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/
著書『松本人志は夏目漱石である!』(宝島社新書)

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