警視庁統計年間580軒増

【ニッポンの裏風俗】風俗は困った時の駆け込み寺たり得るのか? 新店デリヘルに殺到する女のコたち

※イメージ画像 photo by kadluba from flickr

 大阪から上京し、新大久保の人気デリヘルに入店して1カ月というハタチの女のコを取材しているとき、彼女がポツリと言った。

「入ってからしばらくはストレスで毎日ゲーしとった。でも、東京で稼いで帰らなアカンからがんばるワ。キレイに撮ってや」

 そう言って記者のカメラに向かいニッコリと根性の作り笑顔を見せ、ポーズを決めた。

 また別の女のコは、

「以前はデリヘルで働いてたんだけど、(同地域に)店や女のコが多すぎてお茶引くだけ。風俗はお客さんが着いてナンボだから、お客さんがゼロなら稼ぎもゼロ。オッパイパブは、デリヘルのバック(女のコの取り分)に比べると時給は少ないけど、出勤すれば確実にお給料もらえるからしばらくはここで働くの」

 上野で昼から営業しているオッパイパブの人気嬢ですら、“安定”を求めて移住してきたという。

「広告打っても、電話が鳴るのは安心感のある老舗のファッションヘルスか超格安デリくらいです。しかも、予約で埋まる女のコはほぼ決まっていて、そのおこぼれ客にその他の女のコが食べさせてもらってる状況。3、4年前はこんなことなかったんですけどね」

 風俗の広告代理店の担当者はこっそりそう教えてくれた。

 毎年9月に発表される警視庁統計によると、東京23区内に登録されているデリヘルの数は、新風営法改正後の2006年以降、毎年コンスタントに200軒程度増えている。ところが、昨年は1年間で583軒増と、例年の三倍近い新店が登録されていることがわかった。

 すぐに思い当たるのは東日本大震災である。

 震災と風俗店の急増に何らかの因果関係があるのではないのか。それならば、被災地でもある東北の歓楽街・仙台市国分町でも同じことが起きているに違いないと、宮城県警から警視庁と同様の資料を取り寄せた(警視庁統計はHPで閲覧できるが、宮城県警は申請が必要)。

 それを見ると、宮城県内では毎年20~30軒台の増加だったデリヘルが昨年は47軒と、東京とケタは違うものの同様に急増していることがわかった。復興特需に沸き、全国から飲食店やキャバクラ、風俗店が仙台に押し寄せた時期と重なる。特需の波は一段落したと言われる今年ですら、8月末時点ですでに39軒増と報告書に記されている。

「ウチも昨年は仙台に、ここに来て都内に新店(デリヘル)を出したんですけど、どっちも女のコを募集するとスゴい数の応募がありますよ」

 そう語るのは、大手デリヘルグループの広報担当者だ。

 応募してくる分母が大きければ、店のコンセプトにあったコを選ぶのは楽だし、何より高レベルの女のコを揃えることができる。女のコのレベルより料金の方が低ければ、不景気でも確実に電話は鳴る。新規出店のビジネスチャンスは今だという。

 風俗店を始める際、最も難しいのが女のコを集めることと言われていたが、現在は買い手市場に相場は移っている。それでも、女のコの風俗への駆け込みが減らないどころか増えているのは、前述した数字が物語っているとおりだ。理由はすでに聞き飽きた言葉だが、“先の見えない不況と震災の影響”と結論づけて構わないだろう。

 ちなみに、2011年12月末現在、23区内に登録されているデリヘルの総数は2815軒。ファッションヘルスが58軒、ソープランドが204軒。そしてその店舗数の15倍程の風俗嬢が都内に在籍することになる。

 それを知ってか知らずか、

「風俗は稼げる。最後の駆け込み寺は風俗しかない」

 乙女心にそう一大決心をして東京の風俗業界に飛び込んでくるならば、OL時代以上の“努力と根性”が必要なことは覚悟しておかないと、職も希望も一度に失うことになりかねない。楽に稼げる仕事はどこにもない。
(文=松本雷太/著書『風俗体験ルポ やってみたら、こうだった<激安風俗>編』宝島社)

【ニッポンの裏風俗 バックナンバー】
第1回 昭和初期にトリップしたかのような街並み、大阪・飛田新地
第2回 顔見せが無くても人気の新地…大阪五大新地
第3回 政治に翻弄された沖縄風俗
第4回 四国裏風俗ルポ 香川・徳島・高知
第5回 四国裏風俗ルポ・松山
第6回 生駒新地
第7回 全国のポン引き地帯
第8回 本サロ、本ヘル
第9回 温泉コンパニオン
第10回 お手頃料金で遊べる温泉風俗
第11回 連れ出しスナック
第12回 アングラな風俗街として認知されてきた青線
第13回 アジアン風俗~二極分化する中国エステ~
第14回 一発屋旅館
第15回 立ちんぼ

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